▼ 火曜7時は坂田家を食卓で
あとは若い連中でどうぞ、という風にとっつぁんは部屋を出ていった。できることならあたしもついていきたかった。でもできなかった。なぜなら近藤さんに裾を掴まれているから。
「あの〜、バブルス姫はなにか御趣味とかは?」
「ウホ」
「…ああ、アレね〜。いいっスよね、アレ。シュバァァみたいな。ドビシュバァァァみたいな。でもアレあんなやり過ぎると肩痛めるねアレ。痛めないっけ?違うな…炒めるんだっけ?野菜を?」
近藤さんが涙目で“どうしよう何言ってるのか全然わからない助けて”って目で見てくるんだけど。でもあたしもゴリラ語わかんないから助け様がないんだけど。
まあ一応フォロー入れておくか。
『あー…ウホ?
(訳:この人は私のモノよ。手を出さないでくれる?)』
「ウッホウッホ!!」
『あれ!?なんで怒ってんの!?』
おかしいな、“この人はトイレに行きたいようなので行かせてもいいですか?”って言ったはずなのに。
「(気のせい!?段々不機嫌になってない!?)」
『(ご機嫌か不機嫌かなんてわかんないよ!ゴリラだもの。相手ゴリラだもの!!)』
「(あ……緊張しすぎてウンコしたくなってきた。どうしよう風香ちゃん!)」
『(あ、トイレに行きたいってガチだったんだ)』
「(何て言えば中座しても失礼にならないかな!?適当にウホって言っとけばいいかな。ジェスチャーもまじえれば通じるよね)」
『(わかんないけどやってみれば?)』
近藤さんは庭を指差しながらケツを押さえて言った。
「ウホッ
(訳:ちょっと庭でも一緒に散歩しにいかないか? )」
縁側を歩く。――なぜかゴリラまで一緒に。
『なんでェェェ!?』
「アレ?何コレなんでついてくんの。ウソコレ。ヤダコレ」
prev / next