銀色ジャスティス | ナノ


▼ そういう時は黙って赤飯

「「「どうか局長の女房に…俺達の姐さんになってくだせェェ!!」」」


「なんですかコレは。腰の低い恐喝?」

『実はさァ、今近藤さんに縁談の話がきててさ』

「あの人も三十路近い。世間体も考えろってんで幕府うえの方から来た見合い話なんだが、最近のあの人はアンタにふられ続けて疲労し性別がメスなら誰でもいいという限界まできている。風香がいい例だ」

『あん時ばかりは近藤さん死ねばいいのにって思った』

「まァアレだ。…恐らくこの話飲む」

「アラよかったじゃないですか。これで私へのストーキングもなくなるし、近藤さんも愛妻ができるし。みんな幸せになれますね」

「ああ。なんせ猩猩星の第三王女バブルス様だ。逆タマだよ」


あたしはお妙にバブルス様の写真を見せる。あれだ、モノホンのゴリラだ。
それを見てお妙はにっこりと笑う。


「まァ。夫婦は顔が似てくるっていうけれど既に長年つれそった夫婦のようだわ。ゴリ二つよ」

『お妙よく見て!?微妙に近藤さんと違うから!!そっちはモノホンだから!!』


その回答には驚いた。


『お願いだよお妙。あたし達このままじゃその化物を姐さんなんて呼んで一生敬わなきゃなんないの!あたしとしては近藤さんが誰と結婚しようがどうでもいいけどゴリラだけは…ゴリラだけは勘弁だよ!屯所にゴリラが二匹(うち一匹はモノホン)いるなんてそんな環境耐えらんない!!』

「お前そんな風に思ってたのォォォ!?」

『今の近藤さんを止められんのはお妙だけなんだって!』

「大丈夫よ。毛深い女は情も深いといわれているの。きっといい奥さんになってくれるわ」

『深すぎるんだけど!情も毛も彫りも深すぎるんだけど!!』


「この通りだ姐さん!結婚までとはいわない!止めてくれるだけでいい!男がこれだけ頭下げてんだ。この重み!義に通ずる姐さんならきっとわかってく…」

「アラ、どこが重いのかしら?この頭。スカスカの脳みそしかつまってねーだろうがァァァ!!」


土下座をする隊士。代表するかのようにザキは発言をする。そしてそれに怒りを覚えたお妙はザキの頭を持ち上げ、投げ飛ばした。


「てめーらしつこいんだよォ!」

「ちょっとォォ お妙ちゃんん!!」

「んなマネしたらまた勘違いされてストーカーに拍車がかかること山の如しだろーが!」


どうやら説得は失敗に終わったようだ。いや元々無理なのはわかってたけどね。
土方さんは近藤さんに電話をかける。


「もしもし近藤さん。…やっぱり無理だった。もつ覚悟決めるしかねーな。イヤよイヤよも好きのうち?いや、イヤなもんはイヤなんだろ。それからよォ、俺ァもうこんなお使いさせられるのは御免だぜ。あと風香も酒を頼むからしばらくはやめてくれ」

『え、ちょ、勝手なこと言わないでよ!』


土方さんから携帯を取り上げ弁解をしようとした時だった。

――隊士が机に突っ込んできたのは。

初めはお妙に投げ飛ばされたのかと思った。だが違った。投げ飛ばしたのは、お妙じゃない、誰がだった。


「貴様ら、こんな多勢で女に手を出すたァそれでも侍かね?」

「何言ってんの!!どう見ても俺達が姐さんにボコられてただろーが!!それでも僕らは侍です!!」

「このひとに手ェ出してもらっちゃ困る。僕の大事な人だ」

「あ゙ーー!?チビ助が何ナマ言ってんだ」

『ちょいちょいちょい。やめなさい』


そんな小さい子に寄ってたかってガンつけてんじゃないよ。これだからチンピラだのなんだの言われるんでしょうに。


『これ以上店騒がさないで。引きあげるよ』

「それからガキんちょ、お前も来い。お前未成年だろ。こんな店に来ていいと思ってんのか」

「オイ貴様いま何て言った?」

『…っ!』


一瞬のことだった。

土方さんが編み笠を被った小柄な少年に注意をして…それから少年がいきなり殺気を出して――あたしが一歩前に出て土方さんの刀で彼の刀を受けていなければ、さすがにやばかったかもしれない。


「僕は――」


そしてその一瞬で、あたしと土方さん以外の隊士は峰打ちで倒されてしまった。



「――柳生九兵衛だ」



「きゅ…九ちゃん!?」





続く

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