▼ 嫌なことは何度でも起こる
クレープを買えずしょんぼりとした気分で歩いていると前から虫の大群がやってきた。
虫が嫌いなあたしは左に避けた。すると虫も左に来た。
『…………』
右に避ける。虫も来る。
『…………』
また左に避ける。虫も来る。
『…………』
左右に避ける。虫も来る。
な に ゆ え 。
『ちょ!?なんで!?』
ブーンブーンとあたしの周りを飛ぶ虫に嫌気がさす。嫌だ。こんなところいたくない。だって虫がいるんだもの。
『〜!なんなんだよぉぉぉぉ!!』
もういやぁぁぁ!!と叫びながらその場を走り去る。って虫ついてきてるし!?
『なに?なんなの?臭いの?あたし臭いの!?』
ゼェ、ハァ、と息を切らす。
虫達も最初は追いかけてきていたが、諦めたのか気づいたらいなくなっていた。あー よかった。
『ハァ…ッ つかれ、いだぁ!!』
バナナの皮に滑って地面に顔からダイブした。
うおおお…!鼻…っ 鼻打ったぁぁ…!!
「あ!風香アル!」
『ん?あ、かぐ――』
─ドンッ
定春に轢かれた。
なんで!?神楽の声がしたから手振ろうとしただけなのに!
「あ、風香死んだアル」
「んなワケねーだろ。オイ起きろ風香」
「…ってどうしたんですかそのケガ!」
心配してくれるのは新八だけである。小煩いツッコミメガネって思っててごめんよ。優しいツッコミメガネだね君は。
てゆーか神楽、人を勝手に殺すなよ。
『ん〜…大丈夫じゃない?』
「いや、血だらだら出てますけど」
『痛くない痛くないって言ってれば痛みが引けばいいのにね』
「じゃあ痛いってことじゃないですか!」
うん、正直痛い。
「で?何があったんだ?」
『かくかくしかじかってワケなのだよ』
「あー 成程…ってわかるワケねーだろ!」
『いだぁ!!』
スパァァン!!と思い切り頭を叩かれた。ちょ、マジ痛いコレ。アレ、なにか赤いモノが…。
『ちょ、銀時のせいで血ィ出てきちゃったじゃん。どーしてくれんのさ』
「風香さん、それ元からです」
マジでか。
『いやさ、実は――「お前ら!この女がどうなってもいいのか!!」』
確かにさっきはふざけすぎたな、と反省して銀時達にきちんと説明しようとしたらある男に首筋にナイツを突きつけられた。
え、なに。あたし…こんな素人の気配にも気づけなかったの…!?ウソ、なにそれ泣きたい。
「こっ…こここここいつの命がおしくば金を用意しろ!今すぐに!!」
男はめちゃくちゃどもっていて。
銀時はあーあと溜息をもらして。
神楽はやれやれと肩をおとして。
新八は男の人可哀想にと呟いて。
『金だァ?』
そしてあたしは、
『んなモンこっちが欲しいわァァァ!!』
「ぐぎゃあああ!!」
男を殴り飛ばした。
ふう、ちょっとスッキリした。
『さてと…銀時、コイツのことよろしく』
「は?」
『屯所まで連れてって』
「イヤです」
『イヤです』
「まさかのオウム返し!?」
かわいい幼なじみの言うことくらいたまにはきいてよね!そう言い捨ててあたしは男を銀時に押し付けてその場を離れた。誰がかわいい幼なじみだー!という銀時の言葉は聞かなかったことにしておこう。優しいからあたし。
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