銀色ジャスティス | ナノ


▼ どこの母ちゃんも大体同じ

「そうネ、じゃあドンペリでも持ってきてもらおうかしら」

「いやでもお嬢さん未成年でしょ?ジュースとかの方が…うぶっ!!」

「あんまり私を怒らせないでくれる?ボウヤ。お嬢さんじゃない女王様と呼べと言ったはずよ」

「申し訳ございませんでした!かぶき町の女王様!!」


何様のつもりだよ神楽。
そう心の中で思ってしまったのは仕方ないと思う。いや確かにホストクラブは女性が楽しむモノだけどさ、女王様って呼ばれなかったくらいで水ぶっかけんのはどうよ。


「お姉さん何飲む?」

『んー…じゃあドンペリで!』

「かしこまりました!ドンペリ一本入りまーす!」


どうせタダ酒なわけだしここは思う存分飲ませてもらおうかな。


「最近お姉さんどう?何か溜め込んでることとかない?」

『実はさ、仕事場の上司がさァ…』


なんてホストに愚痴っていると聞こえてきたおばさんの悲鳴。


「さわった!今このコさわったわ私のこと!」

「いえさわってませんって。お酒をついだだけ…」

「いえ!さわりましたっ!ヒジでオッパイさわりましたァ 今!
アンタもアンタでさっきから何チラチラいやらしい目でこっち見てるの?」

「…い…いや、見てません」

「見てたじゃないの!さっきからチラチラ私のボデーばっかり!セクハラ!セクシャルハラスメント!」

『ちょっとうるさいんだけど。セクハラはアンタの顔面でしょ』


両脇に座っているホストに苦情をつけるおばさん。
おばさんはあたしの手を引き銀時の隣に移動した。オイ、ふざけんなオイ。まだドンペリ残ってんだぞオイ。


「ちょ、もういやーよ銀さん 風香さん!何ココ!!私たち八郎を捜しにきたんでしょ!こんな所にいるっていうの!?」

「まーまーおちつけよ。アンタらもういいから。俺たち勝手に飲むから」


新八があたし達に耳打ちする。


「銀さん 風香さん、お母さんやっぱりまだ気づいてないみたいですね」

『そりゃそーでしょーよ。いくら息子でもあんな変わってちゃってんじゃねェ…八郎なんてよくある名前だし』

「でも八郎さんはどういうつもりなんだろう?一切お母さんに息子だって名乗り出る様子もないし。五年間音信不通であんなに変わったんじゃ言い出しづらいのはわかる。多分会いたくなかったんでしょうけど…じゃあなんでわざわざ向こうから接触してくたんだろう?」

『理屈じゃないんだよ、人間なんざ』

「うっとーしい母ちゃんでも目の前で暴漢に襲われてりゃ助けちまうのが息子ってもんだろ」

「襲われたっていうか襲ってましたよね、アンタら」


さあ、記憶にないね。


「皆さん、お楽しみ頂けてますか?」

「あ、狂死郎さん」

『ドンペリ最高です』

「野郎に酒ついでもらっても何だかねェ」

「フフ…すいません。ホストクラブゆえ我々はこのようなもてなししか。お好きなだけ飲んでいって下さい。あ、何かお食べになりますか?」


狂死郎はあたし達にお礼をすると(礼儀正しいな)、新八の隣に腰を降ろした。


「あ、じゃあコレ…」

「いらないよ、そんなの。ちゃんとウチから持ってきたから。ホラ、煮豆!コレ年の数だけ食べな。ガンにならないよコレ」

『なに持ち込んでんの!?ビンボーくさいからやめてくんない!?』


おばさんが取り出したのは手作りの煮豆だった。


「こういう所くらいお前スタイリッシュにキメさせろよ!何で甘い豆!?酒に合うかよ!!」

「そーいう怒りっぽいトコロもなおるからこの豆は!食べなはやく!ホラ、そこの派手な兄ちゃんも!」

「え?あ、ハイ」


怒りっぽいって誰のせいだと思ってんの!?紛れもなくアンタのせいなんだけど!!


「狂死郎さん、ちょっとお伺いしたい事が…」

「え?なんですか」

「狂死郎さんってこの店のNo1であり店の経営もやってらっしゃるんですよね。何でもしってますよね?」

「…ええ、まァ」

「あの巨大アフロさんなんですけど…あの人いつからこの店で働いていらっしゃるんですか?」

「八郎ですか?彼はこの店の立ち上げの時から一緒にやってきた僕の親友です。以前は僕も別の店で働いていたんですが、二年前独立しようと彼と二人で。
彼も昔はホストだったんですが今は裏方の仕事を…以前ちょっと整形で失敗しましてそれからは」


整形に失敗ってどんな失敗したらあんなんなるの?オペ室爆発したの?


「…さっきのような事も八郎さんの仕事なんですか?」

「ええまァ 用心棒的な事も…先程はお見苦しい所をお見せしました。物騒な街ですからそういった事もね…この街でのし上がるにはキレイなままではいられませんから。私もかぶき町No1ホストとまで言われるようになりましたが、得たものより失ったものの方が多い。
恥ずかしい話…親に顔向けできない連中ばかりですよ」


で、八郎に何か?という狂死郎の言葉を遮ったのは玄関からのけたたましい音だった。

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