▼ どこの母ちゃんも大体同じ
「母ちゃんだよ。八郎の母ちゃん」
さてこの人は誰の母ちゃんなのか。きいたら八郎の母ちゃんなんだとか。うん、八郎って誰?
「八郎って誰だよ。つーか八郎の母ちゃんが何故ウチで母ちゃんやってんだよ」
「ウチの田舎じゃね、母ちゃんはみーんなの母ちゃん。子供はみーんなの子供」
「グレートマザー気どり?グレートマサみたいな顔して…オイそれ何?なんで食べてんの?ウチのメシなんで食べてんのオイ」
「息子に会おうと田舎から江戸に出てきたんだけどね、ま〜 都会はわからない事だらけでまいったわ〜。地下鉄とかもう迷路よ。ウィザドリィ〜よ」
「オイ、それ何杯目だオイ。それ何?そのパーマどこであてたんだオイ。何パーマだそれオイ」
「で、困ってる時にここの看板見つけてね。まァこれからお世話になる事だし、みんな寝てる間に朝げでもと思ってね」
「オイちょっとそれ俺のプリンだよオイ。それ何?スイッチ?その眉毛の上のオイ自爆スイッチ?それ押したらいなくなってくれるのオイ」
おばさんは万事屋でご飯を食べおかわりした挙句銀時のプリンまで食べ始めた。
そして息子…八郎の写真をあたし達に見せる。
「コレ、ウチの息子の八郎なんだけどさ、五年前江戸に上京してから音信不通で。この街で働いてるのは確かなんだよ…一緒に捜してくれないかィ?」
『マジかよ…コレあたし完全に巻き込まれてんじゃん。万事屋の仕事なのに完全巻き込まれてんじゃん。うっわマジかよー…』
「…いや仕事なら引き受けますけどね、おばちゃんお金とか持ってんの?」
「コレ八郎に食べさしてあげようと思ったんだけどね…仕方ないね」
風呂敷から大量のかぼちゃわを出すおばさん。それ重かったでしょうに。
「オイオイおばちゃんおばちゃん、誠意って何かね?」
「…成程そーいう事ですか。つくづく腐ってるね、メガロポリス江戸。…わかったよ、好きにすればいい。ただ一つだけ言っておく。アンタに真実の愛のんてつかめやしない」
「深読みしてんじゃねェェェ!!気持ちワリーんだよクソババア!!金だ金!!」
おばさんは布団に寝転がった。
***
「まァ報酬は息子さんとやらからたんまりもらうとして。どーだ、見たことあるか?」
「とんと見かけないツラだねェ」
あたし達はスナックお登勢に来て、八郎の写真をお登勢さんとキャサリンに見せた。
『名前は黒板八郎』
「名前なんざこのかぶき町じゃあってなきようなもの。名前も過去も捨てて生きる連中も多いからねェ」
「ちょっとちょっと奥さん、何?ウチの子が何?なんかうさん臭い事でもやってるっていうの?」
「いやいや。そ〜いう奴も多いって言ってんだィ、この街には」
「冗談じゃないよ!八郎はそんなんじゃないよ!あの子は小さい頃から真面目で賢くて孝行者で私の自慢の子だったんだい!
五年前、単身江戸に出たのだって父ちゃんが急に死んじまって貧窮したウチをなんとかするために…あの子…」
おばさんは床に手をついて俯く。
「ぐすっ…絶対…トレジャーハンターになるって…」
『「「「どこが賢い子!?」」」』
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