銀色ジャスティス | ナノ


▼ サンタなんていねーんだよって言い張る奴こそホントはいるって信じたいんだよ

「他は?けん玉関係」

『だからなんでけん玉なの』

「アレだよ、けん玉ブームが来ると予見して多めに持ってきた。ヤマ外れたんだよ…去年の韓流ブームは当たったんだけどね」

「韓流ブームなんてどうやってプレゼントしたんだよ」

『あ。ちょ、意外にけん玉ブームきてんじゃないの?』


次の子。
ほしい物→けん玉と明日へはばたくための翼。


…………あたしもほしいよ。


「ハイ次…けん玉関係」

「もういいだろ、けん玉は」

「うるせーな!ぶっちゃけ今年はけん玉しか持って来てねーんだよ!もうけん玉にかけるしか俺にはねーんだよ!」

『アンタらただのけん玉くれるオッさんじゃないの!!』

「あっ!あったけん玉!!もうこれ最後な。これにかけるぞ!」


ほしい物→けん玉。みんなで一緒にやったっけ……もう戻らないあの夏。


「だからけん玉いらねーだろコレェェェ!!」

『つーかコイツら何歳!?』


名簿を地面に落とし蹴る。ふざけてんのかコレ!

…大きな声を出しすぎたようだ。次々と家から明かりがつく。
そんな時に見つけたのはほしい物が“けん玉と優しいお母さん”の百合ちゃんだった。二人も百合ちゃんに気づいたようで走っていく。しかしあんな格好をしている二人だ、いい印象を持たれるワケがない。百合ちゃんは泥棒だと叫んでお母さんを呼んだ。そして戸を破って出てきたのは、


「「え゙え゙え゙え゙え゙え゙!?」」


体格がいいお母さん。


「ちょっ、待っ、お母さん!?」

「お母さん。え?」

「「優しいお母さんに戻ってェェェ!!」」



─ドォォォン



お母さんの拳が振りおろされた。



***



長かった夜が明け、朝日が昇っている。
何気なく携帯を見ると電話が十数件きていた。どれもこれも土方さんからだった。お前はあたしの彼氏か。
ああでも帰ったら説教か…嫌だな。大体、あたしもう子供じゃないし。二十代だし。


「最後だよ、ベン。このまま帰るわけにはいかない…。もぉーさ、貧しい家の100円ショップで手に入る夢しか持ってない子を選んで、その子の夢だけ叶えて帰ろう。その子の笑顔だけ抱いて帰ろう、今年は。万事屋さん、お願いします」

「だからさァ、この飽食の時代にさァそんなガキが存在するわけな…」

『あ』


神楽
ほしい物→肉まん

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