銀色ジャスティス | ナノ


▼ 粘り強さとしつこさは紙一重

「よけいなウソつかなきゃよかったわ。なんだかかえって大変な状況になってる気が…。それにあの人、多分強い…。決闘を前にあの落ちつきぶりは何度も死線をくぐり抜けてきた証拠よ」

『確かに近藤さんは強いけど…まァ銀時も強いし大丈夫じゃない?』

「心配いらないヨ。銀ちゃんピンチの時は私の傘が火を吹くネ」

「なんなの、この娘は」


ガシャコンと番傘を構えるチャイナ娘。


「おいッ!!アイツはどーした!?」

『厠いってくるって言ってたよ』


あたしが近藤さんの質問に答えると銀時が現れた。


「来たっ!!遅いぞ、大の方か!!」

「ヒーローが大なんてするわけねーだろ、糖の方だ」


糖尿に侵されたヒーローなんてきいたことないけどね。


「得物はどーする?真剣が使いたければかすぞ、お前の好きにしろ」

「俺ァ木刀コイツで充分だ。このまま闘ろうや」

「なめてるのか、貴様」

「ワリーが人の人生賭けて勝負できる程大層な人間じゃないんでね。代わりと言っちゃ何だが、俺の命を賭けよう。お妙の代わりに俺の命を賭ける。てめーが勝ってもお妙はお前のモンにはならねーが邪魔な俺は消える。後は口説くなりなんなり好きにすりゃいい。勿論、俺が勝ったらお妙からは手ェ引いてもらう」


銀時の目は真剣だった。


「(自分の命を白刃の元にさらして、負けても私には危害を及ぼさないようにするつもり!?)ちょっ 止めなさい!!銀さん!!」


銀時の言葉をきき、クク…と笑う近藤さん。


「い〜男だな、お前。お妙さんがほれるはずだ。いや…女子より男にもてる男と見た。小僧、お前の木刀を貸せ」


近藤さんが刀を捨てメガネ君にそう言うが、銀時が【洞爺湖】と書かれた木刀を近藤さんに渡す。


「てめーもいい男じゃねーか。使えよ、俺の自慢の愛刀だ」


メガネ君は自分の木刀を銀時に渡す。


「勝っても負けてもお互い遺恨はなさそーだな」

「ああ。純粋に男として勝負しよう。――いざ!!」

「尋常に」


「「勝負!!」」


近藤さんが木刀を振りかぶると…、


「あれ?あれェェェェェェ!?ちょっと待て先っちょが…ねェェェェェェェェェェェェェェ!!」


先がなくなり、銀時に先手を打たれた。先手っつっても近藤さんはもう戦える状態じゃないけど。


「甘ェ…天津甘栗より甘ェ、敵から得物借りるなんざよ〜」


銀時は洞爺湖の破片を持ち言った。ブン回しただけで折れるぐらいに厠で削ったと。


「貴様ァ、そこまでやるか!」

「こんなことのために誰かが何かを失うのはバカげてるぜ。全て丸くおさめるにゃコイツが一番だろ」

「コレ…丸いか?…」


近藤さんはガク、と気絶する。
あたしは急いで下に降りる。あーあー、こんなにボロボロになっちゃって。


「よォ〜。どうだいこの鮮やかな手ぐ…ちゃぶァ!!」


チャイナ娘とメガネ君の蹴りが炸裂する。


「あんなことまでして勝って嬉しいんですか、この卑怯者!!」

「見損なったヨ!!侍の風上にも置けないネ!!」

「お前、姉ちゃん護ってやったのにそりゃないんじゃないの!!」


「もう帰る。二度と私の前に現れないで」

「しばらく休暇もらいます」


銀時をタコ殴りにし、二人は去っていった。


「なんでこんなに惨めな気分?」

『お疲れ、銀時』

「……ああ、風香か」


二人に殴られボロボロな銀時を見てつい笑ってしまう。


「笑うなよ」

『ごめんごめん。ほら、さっさと帰りな。あたしこれでも警察なんだかんね』

「わーったよ」


あたしの頭をポンポンと数回なでると、銀時は気だるそうに帰宅した。



ちなみに。銀時が帰った後に土方さんが来て状況を説明したらあたしが殴られたという話はあまり知られていない。







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