銀色ジャスティス | ナノ


▼ 鍋は人生の縮図である

そこに近藤さんとザキが入ってきた。
こたつに二人が加わる。


「何だ何だ、先におっ始めてたのか?つれねェな」

「局長、この人達が辛抱なんてできるわけないですよ」

『んだとコルァ もっぺん言ってみろザキ。こっちはなァ、辛抱できないワケじゃないんだよ。辛抱する気がないだけだ』

「それ一番ダメなヤツじゃないですか」


残念だったね、二人とも。お目当ての牛肉はもう…。


「ちょっと副長この肉…豚肉でスキヤキですか?」

「マジか!?かァ〜 大晦日だってのに泣けてくるな〜」

『えっ…』


ぶっ…

ぶっ…ぶぶぶぶ豚肉だとォォォォォォ!!


そっ…そんなバカな事が…

ぶっ…豚肉だと…。

あっ…ありえない…。

確かに…確かにアレは牛肉の味だった…。


いやでもちょっと待て。確かにこの肉はいつも屯所で食べてる肉の味だけど、定食屋で食べた時の味が…


まさかっ…





(side.土方)

その通りさ。

お前が今まで牛肉だと思って食べてきた食卓の肉は全て…





(side.土方 沖田)

安い豚肉だ!!





(side.沖田)

牛肉などという高級な代物が隊士が多くかつ男所帯な屯所に並ぶとでも思ったんですかィ?

そんなもん俺が食べたいわァァァ!!





(side.風香)

そ…そんな。今まで信じていたものがウソだったなんて。

私の生活は全て虚構で固められたフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありませんなんて…。


あたしはその時自分の足元が崩れ去るような言いしれぬ不安を感じていた。

もう誰も信じない。
信ジラレナイ。
豚がアイツでアイツが豚で…

テメーラ全員足の小指ヲ骨折シロォォォ!!



『チッキショォォ!!』



あたしは部屋を飛び出した。
そして総悟の部屋から持ってきた大量の藁人形を鍋に入れた。


「あ゙あ゙あ゙!!てめっ 俺のサド子達に何しやがでィ!」

『ネーミングセンス無っ!!』

「うっせー黙れ!何すんだコノヤロッ」

『アンタ自分の言ったこと忘れたの?食卓は戦場だよ!』

「ああ覚えてらァ!上等だ、表出ろ!雪合戦で勝負だ!!」

『上等だコルァァァ!!』


あたし達は外に出て雪合戦を始めた。勿論作るのも投げるのも本気で。


そして土方さんはひそかに呟くのだった。



「人間ってくだらねッ…」







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