▼ 闇夜の虫は光に集う
新八と神楽の計らいを無駄にするワケにはいかない。あたしとヅラは一本の通路をひたすらは走った。
途中襲ってきた浪士は斬り伏せた。
ようやく通路から出れた。そしてその先にいたのは屋根を見上げている晋助で。
「ヅラ 風香、あれ見ろ。銀時が来てる」
『は?銀時?』
「紅桜相手にやろうってつもりらしいよ。クク 相変わらずバカだな。生身で戦艦とやり合うようなもんだぜ」
「…もはや人間の動きではないな。紅桜の伝達指令についていけず身体が悲鳴をあげている。あの男、死ぬぞ…」
『…晋助は知ってたんでしょ、紅桜を使えばどんな事になるか。仲間でしょ。何とも思わないの?』
「ありゃアイツが自ら望んでやったことだ。あれで死んだとしても本望だろう」
『本望?』
似蔵は刀になる事を望んでいた?
晋助という篝火を護るための刀に。
だとしたらなんて哀れで愚かなヒトなんだろう。
光に目を焼かれ 最早それ以外見えない、だなんて。
「刀は斬る。刀匠は打つ。侍は…なんだろうな」
呟き、晋助は刀身をたてる。
「まァなんにせよ、一つの目的のために存在するモノは強くしなやかで美しいんだそうだ。
『……』
「クク 単純な連中だろ。だが嫌いじゃねーよ。
俺も目の前の一本の道しか見えちゃいねェ。あぜ道に仲間が転がろうが誰が転がろうがかまやしねェ」
チラリと銀時の方を見る。するとどうだろう。似蔵が倒れ銀時が立っていた。
銀時は紅桜と互角…いや、それ以上の力でやり合っているってこと?
いや違う。銀時は紅桜を上回る成長しているんだ。
極限の命のやりとりの中で、身体の奥底に眠る戦いの記憶が甦ったんだ。
***
風香と桂の二人が去った後、新八は武市と、神楽はまた子と戦っていた。
「ふんごををを!!」
「ふむふむ。道場剣術はひとしきりこなしたようですが真剣での斬り合いは初めてのようですね。ふるえていらっしゃいますよ」
「これは酔剣といってなァ、酔えば酔う程強くなる幻の…」
「フフ 無理はせぬ方がいいですよ。ちなみに私の剣技は志村剣といってあの志村けんがコントの時よくやるあの…」
「お前もかいィィィ!!」
新八と同様、武市も震えていた。
「私はね、どっちかっていうと頭脳派タイプだからこういうのはあの猪女にいつも任せているんです」
「誰が猪っスかァァ!!そのへっぴり腰に一発ブチ込んでやろうか!!
実戦は度胸っス先輩!こっちが殺らなきゃ殺られるのみっスよ!」
また子は二丁の銃を使って神楽に発砲する。神楽は空中に飛んだ。
空中では自由もきかない。弾丸は命中した。殺った…また子はそう思った。
「なっ!」
「私を殺ろうなんざ百年早いネ、小娘ェェェ!!」
たが、神楽は両手と口で弾丸をキャッチしていたのだ。
神楽がまた子に拳を振り下ろそうとした時、天井が崩れ何かが落ちてきた。そこにいたのは、
「銀さん!!」
紅桜に支配された似蔵と、傷だらけの銀時だった。
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