▼ 陽はまた昇る
爆風がすごい。そして炎もすごい。
敵から工場がァァ!やら紅桜がァァ!!やらがきこえてきたので、ヅラはおそらく紅桜を造っている工場自体を爆破させたのだろう。
しかしその行動は敵の怒りを買うのと同じこと。でもヅラはそんなの知ったこっちゃないというように神楽の手枷を斬った。
「江戸の夜明けをこの眼で見るまでは死ぬ訳にはいかん。貴様ら野蛮な輩に揺り起こされたのでは江戸も目覚めが悪かろうて」
「眠んのはてめェだァァ!!」
「ふごを!!」
神楽はヅラの後ろに回り込み、バックドロップをかました。頭は船にめり込む。
静まり返る船内。
「てめ〜…人に散々心配かけといてエリザベスの中に入ってただァ〜?
ふざけんのも大概にしろォォ!!」
新八は丸太を振り回す。
『一応幼馴染みが死んだとか聞かされたこっちの身にもなってよね!!』
あたしは鞘で顔面を殴る。
「いつからエリザベスん中入ってた、あん?いつから俺達だましてた?」
「ちょっ 待て。今はそういう事言ってる場合じゃないだろう。ホラ見て、今にも襲いかかって来そうな雰囲気だよ」
「うるせーんだよ!!こっちも襲いかかりそうな雰囲気!」
「待て、落ち着け。何もしらせなかったのは悪かった。謝る。
今回の件は敵が俺個人を標的に動いていると思ったゆえ、敵の内情を探るにも俺は死んでいる事にしていた方が動きやすいと考え何もしらせなんだ。なにより俺個人の問題に他人を巻き込むのは不本意だったしな。ゆえにこうして変装して」
敵が襲いかかってくる。が、二人がヅラの足を掴み振り回したことによって近づけなくなっている。
「「だからなんでエリザベスだァァァァ!!」」
ゴゴゴゴゴ…と近づいてくるのは一艘の船。その船の先頭に立っているのはエリザベスで、この船に突っ込んできた。
「高杉ィィィィィ!!貴様らの思い通りにはさせん!!」
「チッ!!全員叩き斬るっス!!」
乗り込んできたヅラ一派。
ヅラ一派と晋助一派の乱闘が始まる。
「すみません桂さん。いかなる事があろうと勝手に兵を動かすなと言われておきながら桂さんに変事ありとききいてもたてもいられず」
「かような事で桂さんが死ぬ訳ないと信じておりましたが最後の最後で我らは」
「やめてくれ。そんな顔で謝る奴らを叱れるわけもない」
部下は号泣していた。
まァ自分の慕っている上司が死んだかもなんてきいたらいてもたってもいられないよな。
「それに謝らなければならぬのは俺の方だ。何の連絡もせずに」
「桂さん、あなた一人で止めるつもりだったんでしょう。かつての仲間である高杉を救おうと騒ぎを広めずに一人説得にいくつもりだったんでしょう」
「それを我らはこのように騒ぎたて高杉一派との亀裂を完全なものにしてしまった。これではもう…」
「言うな。…奴とはいずれこうなっていたさ」
『………』
【桂さん、ここはいいから早く行ってください】
エリザベスがカンペを見せる。
【まだ間にあいます】
「………エリザベス」
【今度はさっさと帰ってきてくださいよ】
「すまぬっ!」
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