▼ 陽はまた昇る
「晋助様ァァァ!!」
胸元を斬られた晋助に近づくまた子。晋助様!って連呼するとかどんだけ晋助のこと好きなの。
武市はほう…、と感心したように声をもらす。
「これは意外な人とお会いする。こんなとこで死者と対面できるとは…」
「あ…ああ。ウソ……」
『ヅラ…』
そこにいたのは似蔵が殺したと言い回っていたヅラだった。
「この世に未練があったものでな。黄泉帰ってきたのさ。かつての仲間に斬られたとあっては死んでも死にきれぬというもの。なァ高杉、お前もそうだろう」
「仲間ねェ。まだそう思ってくれていたとはありがた迷惑な話だ」
晋助は刀を支えにして起き上がる。クク、と笑う胸元からは冊子が見えた。
呆れたように呟くヅラだけど、その胸元には同じように冊子があった。
「まだそんなものを持っていたか。お互いバカらしい」
「クク お前もそいつのおかげで紅桜から護られたてわけかい。思い出は大切にするもんだねェ」
「いや、貴様の無能な部下のおかげさ。よほど興奮していたらしい。ロクに確認せずに髪だけ刈り取って去っていったわ。たいした人斬りだ」
「逃げ回るだけじゃなく死んだフリまでうまくなったらしい。で?わざわざ復讐に来たわけかィ。奴を差し向けたのは俺だと?」
「アレが貴様の差し金だろうが奴の独断だろうが関係ない。だがお前のやろうとしている事、黙って見過ごすワケにもいくまい」
─ドゴォォン!
「貴様の野望、悪いが海に消えてもらおう」
第五十一訓
陽はまた昇る
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