▼ 一寸の虫にも五分の魂
***
「はァァァァァァァ!?将軍のペットぉぉ!?」
「そうだよ」
『あたし達は幕府の命で将軍様の愛玩ペット“瑠璃丸”を捕獲しにきたの。不本意だけど。ものっそい不本意だけど』
「だから虫嫌いなお前がわざわざ森にきてるってワケか。どーりでおかしいとおもったぜ。たかだか虫のためにこんな所まで?大変ですね〜、お役人様も」
それにいてもお前がなァー、と頭をぐりぐりなでられた。別に悪い気はしなかったのでそのままでいると土方さんに腕を引かれた。いきなりだったのでびっくり。心臓止まったらどーすんだ土方コノヤロー。
「だから言いたくなかったんだ」
「まァまァ。事ここまでにおよんだんだ、こいつらにも協力してもらおう」
『おっ ナイスアイディア近藤さん』
「協力?今そのロリ丸は俺達一派の手の内にあるんだぜ」
『瑠璃丸だよ』
「こいつはとり引きだ。ポリ丸を返してほしいならそれ相応の頼み方ってのがあんだろ」
『瑠璃丸だよ』
「六割だ。そいつをつかまえた暁にはお前らも色々もらえんだろ?その内六割で手を打ってやる」
「だから言いたくなかったんだ」
「俺もそう思う」
『激しく同意』
「よし決まりだ。新八、こいつァしばらく家賃の心配しなくてよさそーだぜ」
「そうですね!」
ブワハハハ、と高笑いをする二人が心底ムカつく。しかしそれも崖の上を見てから止まった。そこには総悟と神楽がいた。
……あれ?なんかとてつもなく嫌な予感がするんだけど。
風に乗って聞こえてきた台詞。それは定春28号の仇を討つために総悟に決闘を申し込むということだった。総悟は総悟で来ると思っていたらしく、とっておきの上玉を用意したとかなんとか。
「いざ、じんじょうに勝負アル!!」
神楽は瑠璃丸を自分の前に置いた。え、ちょっと待って何これ。何これどーいうこと!?
「ちょっとォォォ!!カブト相撲やるつもりですよっ!」
「神楽ァ きけェ!そいつは将軍のペットだ!傷つけたらエライことになるぞ!切腹モンだよ!切腹モン!」
「トシィ!!風香ちゃん!!」
「まァ待て。総悟が勝てば労せず瑠璃丸が手に入る。ここは総悟に任せよう」
『そっ…そうだよ。総悟も全て計算ずくで話に乗ってるんだろうし手荒なマネはしないよ。そこまでバカじゃないだろうし……』
「凶悪肉食怪虫カブトーンキング、サド丸22号に勝てるかな?」
『「「「「(そこまでバカなんですけどォォ!!)」」」」』
そこにいたのは期待を裏切るようなバカデカいカブトムシだった。
「おいィィィィィ!!ちょっと待てェェェェ!お…お前そんなもんで相撲とったら瑠璃丸がどうなると思ってんだァ!?」
「粉々にしてやるぜィ」
「そう!粉々になっちゃうから。神楽ちゃん!定春29号粉々になっちゃうよ!」
「ケンカはガタイじゃねェ!度胸じゃー!!」
「度胸があるのはお前だけだから!ボンボンなんだよ。ロリ丸は将軍に甘やかされて育てられたただのボンボンなの!」
『瑠璃丸だっつってんでしょ!』
早く二人を止めなければ。でもこんな崖登れない。無理。
「力を合わせるんだァ!!侍が五人協力すれば越えられぬ壁などない!」
「よし、お前が土台になれ!俺が登ってなんとかする!」
「ふざけるなお前がなれ!」
「言ってる場合じゃねーだろ!今為すべきことを考えやがれ!大人になれ!俺は絶対土台なんてイヤだ!」
『アンタらが大人になれ!』
「「だったら風香が土台になれェェ!!」」
『何でだよ!!』
色々とおかしいでしょ!!
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