▼ 一寸の虫にも五分の魂
朝。
夜通しでハニー大作戦を実行していた近藤さん他隊士十数名に昨夜の事を伝える。隊士達は近藤さんと同じように全身にハチミツを塗りたくっていた。
「………そうか、やはり一筋縄ではいかん連中だな。こっちも成果ナシだ。つかまるのは普通のカブトばかりでな」
「オイみんな、別に局長の言ったことでも嫌なことは嫌と言っていいんだぞ」
「いやでもハニー大作戦なんで」
『いやだからなんで身体に塗るの』
将軍様はこの森の別邸に御静養の折、瑠璃丸と生き別れてしまったらしい。拾われた可能性も考えて市中も探索したらしいがこれもアタリはなかったようだ。
「一体どこにいるのか瑠璃丸は…。……ん?そういえば総悟はどうした?」
『単独行動だよ』
「ありゃダメだ。ガキどもからカブトまきあげたりやり方が無茶苦茶だ」
「そういうな、トシ。なにせ瑠璃丸は陽の下で見れば黄金色に輝く生きた宝石のような出で立ちをしているらしいが、パッと見は…普通の奴と見分けがつかんらしい。総悟のように手あたりしだいやっていかんと見つけられんかもしれん」
黄金色に輝く生きた宝石、ねェ…。んなもんホントに…。
「銀ちゃん!新八ィィ!!見て見てアレ。あそこに変なのがいるアル」
「あー?変なのってお前また毒キノコとかじゃねーだろうな。変なもんばっか見つけんだもんよ、お前」
「違う違う、アレ」
少し離れた茂みの中。神楽の声がきこえあたし達は耳をすませる。なんだ?神楽は何を見つけた?気になったあたし達は茂みに隠れ銀時達に近づく。
神楽が指していたそれは紛れもなく、
「金ピカピンのカブトムシアル」
あたし達が探していたモノだった。
『「「(え゙え゙え゙え゙え゙!?あっさり見つけやがったァァ!!)」」』
「いかん!それは…」
「待て!」
立ち上がった近藤さんを土方さんが止める。
「おちつけ。ここで騒ぎ立てれば奴ら瑠璃丸の価値に気づくぞ。様子を見よう」
「オモチャかなんかじゃないんですか?」
「違げーよ。アレはアレだよ、銀蠅の一種だ。汚ねーから触るな」
「ホラみろ。バカだろ、バカだろ」
土方さんが小声で銀時を罵る。
「えー でもォ カッケーアルヨ、キラキラしてて」
「ダメだって。ウンコにプンプンたかってるような連中だぞ。自然界でも人間界でもあーいういやらしく派手に着飾ってる奴にロクな奴はいねーんだよ」
「頭が銀色の人に言われたくありませんよ」
「俺は違うよ、これは白髪だから。それに生活も素朴だろ」
「ハイハイ」
神楽は名残惜しそうにしながらも、興味をなくしさっさと歩いていってしまった二人のあとを追いかけた。
真選組は今のうちに瑠璃丸を保護しなければと茂みを飛び出した、瞬間に瑠璃丸は飛んでしまった。
──神楽の帽子の上に。
さ…最悪だァァ!!
「うおっ 汚ねっ!!お前頭に金蝿乗ってんぞ!!」
「うわっ!!」
「え?」
「ちょちょちょ動くな、動くなよ!
うおらァァァァァァ!!」
「いだっ!!」
さすがの銀時も気づいたようで、被っていた麦わら帽子で神楽の頭を叩いた。
「おらァァ 死ねェ!!ちくしょ、すばしっこいな!」
「いたい!いたいアル!」
「動くなってお前!金蝿乗ってんだって。お前はウンコと見なされてんだぞ!!」
「待てェェェ!!待てェ待てェ!!」
止めに入る近藤さん。
「それヤバイんだって!!それっ…」
しかし焦りすぎて木につまづき神楽の頭をチョップした。
その衝撃で瑠璃丸は地面に叩きつけられた。
『「え゙え゙え゙え゙え゙!!」』
「ギャアアアア!るりら…瑠璃丸がァァァ!!」
「いったいなァー!!ひどいヨみんな!!金蝿だって生きてるアルヨ!!かわいそーと思わないアルか!?…あー よかったアル。大丈夫みたい」
『待ってそれ金蝿違う。それ実は…』
「この子私を慕って飛んできてくれたネ。この子こそ定春28号の跡をつぐ者ネ」
『ねェちょっときいてる!?』
「今こそ先代の仇を射つ時アル!いくぜ定春28号!!」
神楽は瑠璃丸を虫カゴの中に入れて歩き出した。オイオイどこいくのあの子?
「オイぃぃ!!待てェ それは将軍の…」
『あ、言っちゃった』
「将軍の…何?」
ぐいっと土方さんの隊服の襟を銀時はそれはそれは恐ろしい笑みを浮かべていました。
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