▼ 一寸の虫にも五分の魂
蚊を万事屋の方に飛ばせば案の定ケンカを始める三人。食べていたカレー鍋をひっくり返しまたケンカ。さらにあたし達は過酷な試練を奴らに渡す。お腹を空かせているアイツらの前でバーベキューをし始めたのだ。
『あー おいし。やっぱキャンプにはバーベキューだよねー』
「カレーなんて家でも食えるしィ!福神漬けもってくるのめんどくせーしィ!」
『じゃあ最初から福神漬けなしで食べればいいだけの話じゃん』
「風香さん、そこつっこまないで」
「オイマヨネーズはどうした?」
「副長、これはおいしそうに食べてる姿を見せつける作戦です。マヨネーズはちょっと」
「てめェェェ!マヨネーズなめてんのかァ!!マヨネーズはなんにでも合うように作られてるんだよ!!」
そう叫んで土方さんはあたしの頭を殴る。オイなんで殴った。あたし完全なる被害者。そして痛い。どんだけの力で殴ったのこの人……!
「よォ 旦那方。まだいたんですかィ?そんな粗末なテントで寝てたら蚊に刺されますよ。あっ」
総悟が銀時達の前まで歩いていき、串をわざと落とす。
「いっけね、落としちまった」
「オーイ 沖田隊長そんなのもういいって。こっちにいっぱいあるから戻ってこいよう」
「おーう。じゃっ 俺はこれで。あっ それ別に食べてもいいですぜ」
総悟はほくそ笑みながら戻ってきた。これで腹を減らして森から出ていくのも時間の問題だろう。……と真選組の連中は思っているだろうが現実はそう甘くはない。なぜなら向こうには銀時がいるのだから。
「ワハハ、キャンプにはやっぱり酢昆布だよな〜」
「バーベキューだって!恥ずかしくない?ベタじゃない?ダサくない?シティー派は酢昆布アルヨネ」
一筋縄ではいかない。そう踏んではいたのだが、まさか酢昆布焼いて食べてるとは思わなかった。いたいたしい。ものっそいいたいたしい。
「おーう税金泥棒。お前らまだいたアルか?」
神楽が酢昆布を持って歩いてきた。……何でだろう、とてつもなく嫌な予感がする。とりあえず自分の分の食料は確保しておこう。
「誰が税金泥棒だ。言っとくがバーベキューはやらんぞ」
「お前らアレだヨ。こんな所でバーベキューやってたらアレだヨ。大変なこと…うっぷ。大変…おっぷ」
神楽は自分の口の中に指を入れて何かをやっていた。そして──
「お゙ぼろ゙ろ゙ろ゙ろ゙ろ゙ろ゙ろ゙!!」
──嘔吐した。
「「「ギャアアアアアアアア!!」」」
「最悪だァァァ!コイツ吐きやがったよォ!うわっ くさっ!!」
「なんて事しやがんだァ!もう何も食う気しねーよ!うっぷ」
「あ、ヤベ。なんか俺…うぼェェ!!」
「ギャアアアアア!!山崎がもらいゲロををを!!」
『…………』
確保しておいて正解だった。そう思わずにはいられないあたしだった。
第四十五訓
一寸の虫にも五分の魂
prev / next