銀色ジャスティス | ナノ


▼ 扇風機つけっぱなしで寝ちゃうとお腹壊しちゃうから気を付けて

歩いていると偶然銀時に会った。ちなみに銀時もあたしと同じ理由らしい。


『へー、銀時も扇風機買いに?』

「そーそー。今時の若いもんは年上を敬うってことを忘れてるね。俺に買いにいかせるなんてさ」

『わかるわかる』


うんうんと頷き、“地球防衛基地”という名のリサイクルショップに着いた。リサイクルショップなら扇風機くらいあんだろと思い中に入る。


「アラ、お侍と役人のお客さんとは珍しいねェ。いらっしゃい」

『扇風機』

「扇風機あんだろ。出せやコラ」


店内はこじんまりした感じで、女店員しかいなかった。
女店員は「せんぷうき」と呟くと煙管を蒸かした。


「懐かしい名だね。アンタら一体どこからその名を聞いてきたんだい?」

「いいからさっさと出せや」

「まァ待ちなよ。ここまで来たのはアンタらが初めてさね。名ぐらい聞かせておくれよ」

『何、領収書?うーん…じゃあ女王様で』

「上様でいいよ」

「上様に女王様…立派な名前じゃないかィ」


そう言うと女は銃を構えた。


「じゃああばよ、上様 女王様!!」


そのまま発砲する。
あたし達はとっさに避け、後ろに置いてあったツボが割れた。


『ぎゃあああああ!!』

「なななななな何すんだこの女!!店長ォォォ!店長を呼べェェ!!」

「離しなァァ!!アンタらのような悪の組織に“せんぷうき”は絶対渡さないよ!!」

『いやいやいやいやお姉さん何訳わかんないこと言ってんの。おちつけ。もしかして強盗かなんかと勘違いしてる?』

「俺達ゃ扇風機買いにきただけだ。ガラの悪さは勘弁してくれ。暑くてイライラしてたんだ」


その時、銃声が響き渡り女の腕から血が流れだした。


『血!?店長ォォォォ!!店長を呼べェェェ!!』

「フフフッ ついに見つけたぞ、ネズミ共の棲み家を」


現れたのはいかにも“俺ら悪だぜヒャッホウ!!”とか言ってそうな連中だった。だって左目眼帯つけてて右手銃みたいになってて左手泡立て器だよ?しかも部下は全員黒タイツだし。うえっ 気持ち悪っ!!


「まさかあの女以外に生き残りがいようとは。だが今日で貴様らの命運も尽きた。地球防衛軍よ」

『…え?あたし達のこと言ってんの?地球…何?』

「とぼけるな貴様!地球防衛軍の生き残りだろうが!!」

「地球防衛って…確かに牛乳パックで本棚つくったり地球に優しくしたことはあるが言い過ぎだろ。やめて。照れるから」

「とぼけるなっ!“せんぷうき”を渡せ!!」


もしかしてコイツらも扇風機買いにきたの?え、今レトロブームか何か?こんなに流行ってるなんて知らなかった。どうりで買えないはずだ。


「せんぷうきは…誰にも渡さないよ。アンタらなんかに絶対渡さない!!」


女が投げたのは爆弾だった。なんでそんなん持ってんの。いや一般人が拳銃持ってる時点で色々とアレなんだけどね。
なんて事を考えながらあたし達は店の外に避難した。



『ゲホッ ゴホッ』

「なんでこんな目に遭わなきゃならねーんだ。扇風機買いにきただけなのに」

「うう…アンタら…何者か知らないが悪い奴じゃなさそうだね」

『だから扇風機買いにきただけだってば』


路地裏の壁に女を寄りかからせる。


「奴らにアレを渡す位ならアンタらの方がマシだ。一つ頼まれてくれるかィ?」

「オイ聞いてる?扇風機買いにきただけなんだって」


女は着物の裾をごそごそとあさり、一枚の紙を取り出した。


「“せんぷうき”はその場所に封印してある。その場所にいって“せんぷうき”を破壊してきてほしい」

『買いにきたって言ってる奴に破壊の申し出!?』

「アレは人心をまどわす悪魔の機械からくりだよ。人が手を出していい代物じゃないんだ」

「どーいう意味だ?あの、アレか。手ェ入れたらガカガってひっかかるアレか?痛てーよなアレ。一回はやるよなアレ」

「私の父は江戸でも有数のからくり技師だったのさ。その腕に目をつけた奴らは父にあんなものを………。でもあんなものでも父がつくった最後の機械…連中から“せんぷうき”をとり返しておきながら今まで破壊できなかったのは全て私の弱さゆえ。アレを奴らに渡したらもうおしまいだわ。お願い、せんぷうきを」


連中の一人に見つかってしまった。


「二人とも早く行って!」

『でも…』

「江戸を…地球を救って!!」

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