銀色ジャスティス | ナノ


▼ 家政婦はやっぱり見てた

『あ、もしもしヅラ?実はさ…』



***



あたし、新八、神楽の三人は使用人として橋田屋に潜入した。どうやったかは企業秘密という事で。
歩いているとマダオを見つけた。気づかれないように背後に回る。そしてそこから見えた光景は、女性…お房さんが捕まっているところだった。


「オイオイこいつァあんまり長居する所じゃなさそうだな」

―だがこの仕事をやめてどーする。またプーの生活に戻るのか?

「そうだ。いつも俺はそうだ。ちょっと嫌なことがあったらスグ仕事変えて…逃げぐせがついてる」

―その通りだ。まるでダメな男…マダオだ。そうだ、死のう。

「いやいやいやいや、おかしいぞなんで死ぬの?おかしいぞ今の。そうだ、京都に行こうじゃないんだから」

―いやいやいやいや、死んどけって。どうせこの先生きてたってロクなことないアル。

「アルって何だ……ん?」


そこでマダオはようやくあたし達の存在に気づく。


「!! …って何してんだてめーらァァァ!!お前かァァ!人の頭ん中に変なナレーション流してた奴は!!オイ!なんでこんな所にいるんだ!?何やってんだてめーら!?」

『見ればわかんでしょ、家政婦だよ』


てゆーかマダオこそなんでこんな所にいんの。あ、転職か。


『丁度いいや。マダオ、ちょっとあたし達案内してくんない?実はね、なんやかんやで橋田屋を調べにきたんだよ』


事情を説明すると、マダオは予想通り驚く。


「オイオイ孫って何!?まさか橋田屋の旦那の孫 勘七郎君のこと!?それが万事屋の前に捨てられてて銀さんがどっかつれてっちゃったって!?」

『うん』

「オイオイヤベーよ。橋田屋の旦那、浪人を使って血眼になって探してるって話だぞ。殺られちまうよ!あのオッサンただの商人じゃねーんだって!なんか黒い噂の絶えねー危ねーオッサンなんだって!」

『知ってるよ』

「知ってんの!?知ってて調べるの!?バカか!帰ろう!オジさんと一緒に帰ろう!酢昆布と酒買ってあげるから!」

「そんな話聞いたら余計に帰れないですよ。やっぱりお登勢さんの言った通りだ。何か裏があるよ、これは」

「その通りネ!酢昆布ぐらいで釣られる尻軽女と思ったかコノヤロー!何個だ!?一体酢昆布何個で釣るつもりだった?まさか四個じゃないだろうな!四個もくれるんじゃないだろうな!」

『酒くれんの?マジで?じゃあ金寄越せよ』


あとは勝手にすれば?と言うと「辛辣!」と返ってきた。


『あ、先に言っとくけど、さっき女性連れていってたの攘夷浪士だから』

「んだよもー、攘夷浪士かよ……って攘夷浪士ぃぃ!?」

『気づかなかったの?』

「気づくワケねーだろ!普通の人に見えるわ!」


コイツ ツッコミうるせぇ…。


巨大ビルここがそうだよ。徳川幕府開闢より続く老舗。元は小さな呉服問屋だったらしいんだけど、時代に応じた柔軟な発想で変化発展をくり返し今では江戸でも屈指の巨大企業になってる。これの現当主 橋田賀兵衛。これがくせ者でさ、一見ただの好々爺だけど裏で攘夷浪士達のパトロンのようなことをやってるんだと』

「パトロン?」

『つまり、テロリストのテロ活動を裏で援助してるってこと。けど商人は利益にならないことはやらない連中だから、援助する代わりに浪士達を闇で動かし商いに利用していることは明らか』

「汚い仕事を請け負わせる用心棒代わりってわけですか?」

『実際奴の商売敵で消えた者も少なくない。いち商人とは思えん程の権力を有し恐れられる男。それが橋田賀兵衛のもう一つの顔だよ』


ちょっと待ってください、と新八からストップがかかった。


「風香さんいつの間にそんな事調べたんですか。僕らとずっと一緒にいましたよね!?」

『全部ヅラに聞いた』

「まさかさっきの電話アルか?」

『そそ』



***



『あ、もしもしヅラ?実はさ…』

〈なに?橋田賀兵衛について教えてほしいだと?〉

『イエス』

〈別に構わないが…しかし何故?〉

『実はかくかくしかじかでさぁ』

〈なるほど、そーいうことか。あいわかった、説明しよう〉



***



『――ってワケ』

「僕らの知らない所でそんなやりとりがあったなんて…」


話している内にお房さんが連れ込まれた部屋の前に到着した。鉄格子の間から顔を覗かせると、お房さんは柱に縛り付けられ拷問を受けていた。

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