▼ ミルクは人肌の温度で
「ちょっと私にもやらしてヨ!」
『あたしもあたしも!』
「ガキガガキニ触ルナンテ百年早ェヨ!」
『誰がガキだふざけんな年増』
「ナンダト!?キコエテンダヨ!!」
「ちょっ 押さないで下さい!」
「やかましいよ、ババァに任せときな!ババァは得意だからこんなん!」
「(オイオイ、なんかヤバクねーか)」
『ミルク コレだけじゃ足りないんじゃないの?』
「しょうがないねェ、買い出しいくかィ。ったく面倒だね」
「(みんな、なんか楽しそうだし)」
ミルクや赤ちゃん用品などを一通り買いそろえる。そこにはガラガラなどもあって、店はスナックの面影は薄くなっていた。
「なんかこんなんあった方がいいだろ。ったく世話焼かせるガキだよ」
「全クデスネ。ダカラ嫌イナンデスヨ、ガキハ」
『やだ、超かわいい』
「ベロベロバー」
「なんだァ?全然笑わないなァ」
「(…なんか、メロメロだし…)」
「よーしよし。金時、お前は親父みたいな人間になっちゃダメだよ」
「万時、こっち向いて万時」
「銀楽、お母さんだヨ銀楽」
『銀三郎、アンタは恥のない人生を送るんだよ』
「坂田、アホノ坂田」
「(全部俺にちなんでるしィィ!!)」
銀時はベビーカーを抱え、店の扉を壊してどこかに行った。
『銀時てめっ どこいくんだコノヤロー!』
「あの野郎、まさかまた捨てに行くつもりじゃ!?」
「させるか!!」
後を追いかけようと思ったが、「あのう…」と声をかけられそれはできなかった。
「すいません、ちょっとお伺いしたい事があるんですが」
男性はあたし達に一人の女性が写った写真を見せてきた。どうやらこの女性を捜しているらしい。だが残念ながら見たことがない。あたし達は首を横に振った。
「そーですか。あっ 申し訳ございません、いきなり名乗りもせず不躾に。あの、申し遅れました。私 橋田賀兵衛と申しましてこのかぶき町で店を開かせてもらってます。ご存知ですか?」
「え゙!!あの大財閥の!?」
「なにそれ?」
『後ろに見えるでしょ?あのデカイ建物のことだよ』
「かぶき町のことなら何にでも精通しているというお登勢殿にお聞きすれば何かわかるかもしれないと思いお伺いさせてもらったんですが」
「悪いね、力になれなくて。で?一体何があったんだィ?」
男性…賀兵衛さんは言いにくそうに口を開いた。
「実は…先日私のたった一人の大切な孫が…あの…突然…いなくなってしまいまして」
『かどかわし、ですか?』
「…断定はできませんがまだ歩くのも覚束ない子ゆえ、恐らく。…それで心あたりをあたってみたところその娘が…」
こんなキレイな人が、ねェ…。人は見かけによらないってホントだね、こりゃ。
『だったら捜索願いを出してください。真選組が全力で捜しだしますので』
「それが何ぶんこみいった事情がございましてあまり公には…」
『事情が事情だし、そんな事言ってる場合じゃないでしょう』
「ええ、そうなんですが…なんとも。あの、みなさんどうか…この娘を見かけたら連絡でけでもいいのでご協力願います。あの、孫の方の写真も…」
そんな時、店に客人が来た。それは写真の女性で、ボディガード的な男二人に押さえつけられていた。
「やめてェェ!!離してェ!!」
「この性悪女が!とうとう見つけたぞ!!勘七郎をどこへやった。言え!」
黙る女性。賀兵衛さんは女性の頬を引っ叩く。
「この女!!立場をわきまえんか!」
『ストップストーップ。何やってるんですか。そんなんじゃしゃべれるもんもしゃべれないでしょうに』
「すいません、つい興奮してしまって。ですがここからは家族の問題ゆえ、私達で解決します。お騒がせして申し訳ございませんでした」
賀兵衛さんとお登勢さんは互いを睨む。
賀兵衛さんは女性を車に乗せ発車させた。
「あ゙――!!」
「チョットチョットコレ!」
『何、どうしたの?』
「これ、あのジジィが捜してるって言ってた孫の写真…」
渡された写真には、さっきまであたし達と一緒にいたあの赤子が写っていた。
続く
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