銀色ジャスティス | ナノ


▼ どうでもいいことに限ってなかなか忘れない

「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」


太郎日記帳、というものを音読しだしたマムシ。そして涙を流して日記帳を破った。


「お前らにわかるかァァ!!マムシの気持ちがァァ。息子の日記にこんな事かかれたかわいそうなマムシの気持ちがァァ!!」


わかんないっつーかわかりたくないね。


「あと少しだ!!あとちょっとで息子も更正できたのにリストラはねーだろ!おかげで息子はひきこもりからやーさんに天職だよ!北極から南極だよお前」

『最高の酒の肴じゃないの』

「飲みこめるかァァ!!デカすぎて胃がもたれるわァ!!」


もたれちまえ。


「こちとら三十年も幕府おかみのために滅私奉公してきたってのに、幕府も家族もあっさり俺をポイ捨てだぜェ!!間違ってる!こんな世の中間違ってる!だから俺が変える!!十年かけてつくりあげたこの『蝮Z』で腐った国をブッ壊して革命起こしてやるのよ!」

「腐った国だろうがそこに暮らしてる連中がいるのを忘れてもらっちゃ困る」

『革命なら国に起こす前にまず自分に起こしたらどう?その方が安上がりだよ』

「うるせェェ!!てめーらに俺の気持ちがわかってたまるかァァ!!」


蝮Zで撃つ態勢に入った。こちらも用意せねば。土方さんは総悟に大砲を用意するように言った。総悟は大砲を用意した、土方さんの頭に。


「いやそこじゃなくて」

「!?」

「何びっくりしてんだァァ!!こっちがびっくりだわァ!!」


土方さんが言うと驚いたように目を見開く総悟。


『って土方さん!アレ!大砲の近く!!』


そこには近藤さんとザキ、そして銀時が縄で縛られていた。


「クク こいつらがてめーらの仲間だってことはわかってる。俺達を止めたくば撃つがいい。こいつらもこっぱみじんだがな、クックックッ」



─ドゴォン



総悟は躊躇いなく撃った。


「総悟ォォォォォ!!」

「昔近藤さんがねェ、もし俺が敵につかまる事があったら迷わず俺を撃てって…言ってたような言わなかったような」

「そんなアバウトな理由で撃ったんかィ!!」


だがそのおかげか、銀時達はマムシの元から逃れることができた。
それをチャンスと思った土方さんは大砲を撃つように指示する。それに対するようにマムシも撃つ。


『!!』


咄嗟にドラム缶の後ろに隠れた。爆風がおさまり周りを見るとそこは一部分だけが焼け野原みたいになっていた。うわー、恐ろしい。


「見たか蝮Zの威力を!これがあれば江戸なんぞあっという間に焦土と化す。止められるものなら止めてみろォォ。時代に迎合したお前ら軟弱な侍に止められるものならよォ」

『……』

「さァ来いよ!早くしないと次撃っちまうよ。みんなの江戸が焼け野原だ!フハハハハ どうした?体がこわばって動くこともできねーか、情けねェ…」


その時、爆風のせいで倒され起き上がれなくなっていた銀時の前に現れた二つの影。


「どうぞ撃ちたきゃ撃ってください」

「江戸が焼けようが煮られようが知ったこっちゃないネ」

「でもこの人だけは撃っちゃ困りますよ」


それは新八と神楽だった。


「な…なんで。なんでこんな所に…僕のことはもういいって…もう好きに生きていこうって言ったじゃないか。なんでこんな所まで」


ゴッと二人は銀時の頭を蹴った。いや、踏んだの方が正しいかもしれない。


「オメーに言われなくてもなァ、こちとらとっくに好きに生きてんだヨ」

「好きでここに来てんだよ」



「「好きでアンタと一緒にいんだよ」」



あたし達も、同じように銀時の前に立った。


「ガキはすっこんでろ、死にてーのか」

「あんだと、てめーもガキだろ」

「なんなんスか、一体」

「不本意だが仕事の都合上一般市民は護らにゃいかんのでね」

『そーいうこと。撃ちたきゃ撃ちな』


チン砲だかマン砲だかしらないけど毛ほどもきかないよ。


「そうだ撃ってみろコラァ」

「このリストラ侍が!」

「ハゲ!リストラハゲ!」

『死ね!ハゲたショックで死ね!』

「俺がいつハゲたァァァ!!つーかハゲてねーから!ハゲたショックで死ねってなんだァァァ!!上等だァ 江戸消す前にてめーらから消してやるよ!」

『あたし達消す前にお前消してやるよ!いけェェ!!』


挑発に乗ったマムシはこちらに大砲を向ける。あたし達は駆け出した。


「新八、木刀もってきたろうな?」

「え、あ…ハイ…」



「工場長すんませーん、今日で仕事やめさせてもらいまーす」



駆け出すあたし達を追い越し新八から木刀を受け取ったのは銀時で。


「ワリーが俺ァやっぱり自由こいつの方が向いてるらしい」

「死ねェェェェ 坂田ァァァ!!」


蝮Zを撃つが既に遅くて。


「お世話になりました」


ニヤッと笑った銀時が蝮Zの中に木刀をぶっ刺して破壊した。






蝮Zを破壊した銀時がこっちに戻ってくる。ゆっくりに感じるのはなぜだろう。
銀時はあたし、そして新八と神楽の横も何も言わずに通り過ぎる。


『銀と…』


ポン、と頭に手がおかれた。
そして一言。



「けーるぞ」



そこには、いつもの死んだ魚のような目をした銀時がいて。ああようやくいつもの銀時だと人知れずに安堵した。
やっぱり銀時はああじゃないと。







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