銀色ジャスティス | ナノ


▼ オカマは男のバカさも女のズルさも全部知ってる

茂みからガサゴソと聞こえる足音。そしてよっちゃんの言葉を思い出す。




「ここにはいるんだ、得体のしれねーもんが…」




「てる彦くん?てる彦くんだよな…てる彦くんだと言ってくれ」


そして考えることはただ一つ。


「てめェら、普通この状態の俺置いてくか?」

「貴様ここに住むといっていたではないか」

『心配しなさんな、スグ戻ってくるから。カステラ買ってくる。カステラだから』


逃げる。だが銀時に足を捕まれた。


「カステラなんか何に使うつもりだよ!ヅラ子ォォ 風香ァ、私達スリートップで今まで頑張ってきたじゃない」

『「しるか」』

「わかった!あのアレだ!昔お前がほしがってた背中に『侍』って書いてある革ジャンやるから!」

「誰が着るかァァ そんなセンスの悪い革ジャン!!」

「風香はあの…アレ…今度デートしよう!」

『断る』


いい加減諦めて手を離してくれないだろうか。


「………何をやっとるんだ、おぬし達」


現れたのは、バカ皇子ことハタ皇子とお付きのジイだった。
あたし達は事情を説明する。ちなみに銀時が壁から脱出できたのはあたしが刀で壁を壊したからである。もちろん皇子の了承を得て。


「ほうほう、ではその子供がここに入ったきり戻ってこんと。おぬしらはそれを捜しに来たわけじゃな」

『そーそー』

「最近何やら子供達がこな庭に入ってイタズラしておったからの〜。あそこの離れに木が見えるじゃろう。その木の実を持ち帰れば立派な侍の証とか…まァ子供らしいといえば子供らしいが」

「それではこの庭は貴様のものなのか?ちっちゃいオッさん」

「誰にむかって口きいとんじゃワレェ!このちっちゃいオッさんがどなたと心得るワレェェ!!」

「よさんか、じい。星は違えども美人は手厚く遇せと父上がおっしゃっていたのを忘れたか?」

「皇子、騙されてはなりませんぞ。何やかんやでお父上は結局ブサイクと結婚しておられるではありませんか」

「オイ!それ母上のことか?母上のことかァァ!!テメー今度母上の悪口言ったら解雇すっからなクソジジー。ん?アレおぬし…どこぞで会ったかの?」

「いやだ〜 キモーい、縄文式のナンパ?そんなんじゃ江戸っ子はひっかからないぞハゲ死ねば?」

「そうか…どこかで会った気がするのじゃが」


皇子は銀時を見てどこかで会ったかと質問するが、銀時は目を輝かせて別人になっていた。


「美人が困っておるのにほうっておくワケにもいくまい。この方らの人捜し手伝ってしんぜよう。のう、じい?」

「あ、俺パス。四時からゲートボール大会あるから」

「クソジジー 地獄のゲートをくぐらせてやろーか」

「皇子殿、ちょっと伺いたいことが。子供達の間でここに化け物が棲みついているとの噂があるのだが何か心当たりは…」



─ギャォォオオォス



茂みの向こうから鳴き声がした。それはだんだん近づいてくる。茂みから顔を覗かせたのは、


「ギャオ〜ス」


定春くらいの大きさのかわいらしい犬だった。


「オ〜ウ ポチラブミー。化け物とはコレのことか?ポチは化け物なんかじゃないぞよ。ここは余のペット ポチのために用意した庭でな、空き家だった武家屋敷を購入してポチの遊び場にいておる。心配せずともポチは子供に危害を加えたりせんわ。ね〜 ポチ」

『「…スイマセン、僕(あたし)も触らせてもらっていいですか?」』

「オイ!止めとけ」

「何をおびえている?」

『確かに図体はデカいけど、こんなに愛らしい動物が人に危害を加えるわけないでしょ。天使だよ天使』


よしよし、とポチを撫でているとさっきの鳴き声が聞こえた。しかも真上から。アレ?でもポチは鳴き声発してない。ちらりと上を見上げるとあらびっくり、そこには三本の角を生やした獣がいた。


「オイぃぃぃぃぃぃぃぃ!天使とヤクザが同棲してるじゃねーかァァ!!」

『天使とヤクザがチークダンスを踊ってるぅぅ!!』

「ポチは辺境の星で発見した珍種での〜、下は擬態でコレに寄せつけられたエサを上の本体が食らうという大変よくできた生物なのじゃ」

『まさに今のあたし達じゃんか!!』


サラミしか食べないと皇子は言うが、ポチは皇子の額なね生えていた触角を食べた。額から血が出る。


「いやコレはアレだよ、じゃれてるだけだから。いやマジで」

『んなわけあるかァァ!!人体の一部が欠損してんでしょーが!アンタ何?ポチに悪さでもしたの?』

「大丈夫だって、コレまた生えるから」


ポチ(本体)はあたし達に襲いかかる。


「ぎゃああああ!!」

「うおわァァ ヤバイ、シャレにならん!」

『ちょ…コレヤバくね?ガチでヤバくね?』


悲鳴が響き渡った。

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