銀色ジャスティス | ナノ


▼ オカマは男のバカさも女のズルさも全部知ってる

「てる彦ォォ!!」


店に戻ると、恐い顔をした西郷さんがくわっと顔を…ん?よくわからなくなってきたな。


「何があったの〜、こんな大ケガして。病院よ!早く病院にいかなきゃ。赤ひげよ!赤ひげを呼んでェェ!!」


青ひげなら一杯いるけど。


「大丈夫だよ父ちゃん、かすり傷…ぐほっ」

「父ちゃんじゃねェ 母ちゃんと呼べェェ!!」


西郷さんはてる彦くんの胸ぐらを掴みあげる。ちょ、それあなたの息子。


「てる彦、アンタ最近いつもケガして帰ってくじゃない。一体塾で何やってるの?何か隠してるだろ」

「しっ 心配しないでよ母ちゃん。帰りに友達とチャンバラごっこしてるだけだから。じゃ、僕遊びにいってくる」

「ちょっ 待ちなさい!」


その時、てる彦くんが落とした紙に気づいたが、ヅラに目で任せろと言われたので任せた。




酒一瓶を一気に飲む西郷さん。まあいわゆるヤケ酒というヤツだ。


「ママ〜、ちょっと飲み過ぎよ」

「どうしたっていうの?急に」

「ほっときなさいよ、オカマにだって飲みたい時ぐらいあるのよ」

「アンタにオカマの何がわかんのよォ!!」


何もわからないっつーかわかりたくない。


「まったく 程々にしときなさいよ、ママもパー子も風香も」


オカマ達は去っていった。どこにいったか?知らない。


「………あの子にはホントに申しわけないと思ってる」

『「!」』

「こんな親父をもってバカにされない方がおかしいものね。全部私のせいだわ」

「…なんだ、全部知ってたのか。だったら話が早ェや」


銀時は西郷さんにてっぺんだけハゲたヅラをかぶせる。まあサ●エさんの波●さんを思い浮かべてくれればいい。


「ん〜 これじゃあ今度は親父がヤクザっていじめられそーだな。もっとダメっぽい親父に…額にウ●コでも描いとくか」

「何やってんだてめェ!」


銀時は西郷さんに殴られた。自業自得だね。


「…てる彦がもの心つく前に母親が死んで、それからは私が母親代わりもしなくちゃいけないって。それが行き過ぎてこうなっちまったけど。今まで一度だってそれを後悔したことはないし、これからもするつもりはない。確かにこのみにくい姿を見て笑う奴もいるけどね、この魂だけは男よりも女よりも美しいつもりだからさ」



***



あたし達三人は酔い潰れた西郷さんの目を盗んで脱走を図っていた。そんな時だった、ヅラがバカなことを言い出したのは。


「銀時 風香、やはり俺は戻る」

「あ?何寝ボケたこと言ってんだオメー」

「…どうにもあの親子のことが気になってな」

『アンタこれ以上オカマシンクロ率が上昇したら本物になるよ』


西郷さんが酔い潰れてる今しかチャンスはないんだよ。


「逃げるならいつでもできる。だが今しかやれんこともある」

「頑張ってヅラ子」

『あたし達陰から応援してるから』

「待てパー子、風香」

「いだだだだだだ オカマになる!ホンモノになる!」

『ヅラ子離せバッキャロー!』


塀を登ってる最中にヅラに足を捕まれた。


『なに、なんなのアンタは!』

「一人で好きにやりゃいいだろーが!!」

「何言ってんのよパー子 風香。私達三人 スリートップで頑張ってきたじゃない」

『「しるかァァ!!」』

「まずい飯ではあるが西郷殿にはしばらく食わせてもらった身だろ。恩を返すのは武士として当然の道ではないか」

「武士がガキの喧嘩にクビつっこむってのか?」


塀を登り、下におりると慌てるガキが二人目の前を走っていった。さっきてる彦くんをいじめていた二人組だった。あたし達は視線を合わせ、ガキを捕まえた。



「んだよ、はなせよォ!オカマがうつるだろ!」

「キショいんだよてめーら!」


よっちゃんと呼ばれていたガキは銀時が、片割れはヅラが捕まえてる。


「ヅラ子キショいって!」

「何言ってんだ貴様のことだぞ、パー子」

「オメーだよ、青白い顔しやがって。外で遊べ!」

「貴様こそ貧乏丸出しの顔してるぞ。盗んだ給食費を返せ」

『いや二人ともキショいよ』

「「何言ってんだ、風香もだろ」」


お前らホント殺す。


「言っとくけど俺達悪くねーからな」

「俺達は止めたのにアイツが勝手に…」

「要領をえねーな、ハッキリ言えよハッキリ。スポーツ刈りにするぞ」

「ど…度胸試しだよ」


バリカンを出されれば話をするしかなくて、よっちゃんはポツポツと話し出す。
どうやら、ガキどもの間で流行ってる度胸試しがありからかったらてる彦くんが本当に行ってしまったという。



あたし達は度胸試しが行われているという空き家に来た。


「………空き家?」

「空き家なんかじゃねーよ。ここにはいるんだ」

「こないだも得体のしれねー獣みたいな鳴き声きいたし、なんか絶対いるんだって」


ガキ二人を空き家の外に残し、壁にあいていた穴で中に入る。


『……化け物屋敷って奴か』

「風香はともかくオイ ヅラおめースゲーな。よくこんな狭いトコ…アレ?ウソ アレ?マジでか?マジでか?」

『何してんの、アンタ』


身体を前後に動かしているところを見ると、どうやら穴にはまって動けなくなってしまったらしい。


「いや、前にも後ろにも動かなくなっちゃった」

「…パー子、だからお前はパー子なんだ」

「なんだコノヤロー。パー子のパーは頭パーのパーじゃねーからな!」

『頭がパーだからそんな歪んだ毛が生えてくるんでしょ。ホラ 力抜いて』

「いででででで ダメだ!もうほっといてくれ。俺もうここで暮らすわ!」


銀時の腕をヅラとともに引っ張るがびくともしない。そんなやり取りをしていると、後ろの茂みから足音が聞こえた。


『「「!!」」』

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