化学変化
「――俺はこの……クソ可愛い後輩を、同じセッターとして正々堂々叩き潰したいんだからサ」
『……』
みんなにおいていかれ慌ててあとを追うと、校門らへんに固まっていた。なんだなんだと近づくとなるほど、徹がいるようだ。
台詞を言い終わると同時に及川はあたしの存在に気づいたようで、それから、と続けた。
抱き寄せられた。ちょ、マジ離せ。
「風香は俺のモノだから勝手に手出ししないでね」
『人をモノ扱いすんなカス』
「口悪いなー。あっ
烏野の前だからこの体勢が恥ずかしいのかな?」
『一呼ぶぞコノヤロー』
「呼べるものなら呼んでみなよ!」
この体勢じゃ携帯も使えないくせに!と言われた。フッ…バカだな徹。呼べるに決まってるでしょ。
『はじめェェェ!!!』「そういう呼び方!?」
「くォらァァァクソ川ァァァ!!」
「しかも来るの速いし!!」
「片付けサボってんじゃねぇ!んで風香は今は烏野のマネなんだから仕事の邪魔すんな!」
「だって岩ちゃん!」
「だってもクソもねぇ!ほらさっさと歩け!…風香、気をつけて帰れよ」
『うんありがと。じゃーね』
バイバイ、と手を振り二人と別れた。
「……風香」
『ウィッスわかってます』
ちゃんと話しますから笑顔やめて大地さん。
***
『――というワケです』
「つまり及川と岩泉とは幼馴染みで、それ以上でもそれ以下でもない関係ってワケだな?」
『そーですようやく理解してくれましたか』
何回この説明を繰り返したんだろうか。
練習試合が終わり体育館で尋問のようなことをされていた。マネージャーの仕事もあるのに、と呟くと潔子さんが私がやっておくから、と苦笑ぎみに言っていた。だから澤村達の方に行ってあげてと。
「付き合ってるワケじゃないんだな?」
『だから違いますって!ただの幼馴染みです!!』
「……本当だな?」
『なんでそんなに疑り深いんですか!』
「じゃあなんで今まで教えてくんなかったんだ?」
『め、めんどくさかったからとかじゃアリマセンヨ?』
「「(ウソ下手だなー…)」」
なんて大地さんとスガさんがそんなこと思ってるなんてことは知らずに、気づけばそれなりの時間が経っていたようだった。
…二人に説明してる間に片付け終わっちゃったし!潔子さん帰っちゃったし!
あたしの癒しがぁぁぁ…。