ケガの心配
『なんでいるの』
「お邪魔してるよ、風香ちゃん!」
「悪いな、風香」
坂ノ下商店で別れてから家に帰ったらなぜかいる幼馴染みの二人。徹と一だ。
『一はいいよ。なんでクズ川がいるの』
「何その扱いの差!」
『普段の行いの差だよ』
ひどいひどいとめそめそ泣く徹は置いておいて。
なぜ二人はここにいるんだろう?いや確かに家は徹と一に挟まれてるけど!徹、あたし、一の家の順番だけど!
「練習試合のこと聞いた?聞いたよね?」
『聞いたよ飛雄をセッターとしてフルで出すことなんてふざけた条件だしやがってコノヤロー』
「だって飛雄ちゃんだよ?警戒しておくに損はないじゃん」
「それだけを言いに来たんだ。いきなり来て悪かったな」
『一かっこいい』
「及川さんは?」
『…………』
「無言ヤメテ!!」
いや無言にもなるでしょ。むしろならない方がおかしいでしょ。
『二人ともご飯は?』
「まだだよー」
「部活終わって直でココ来たからな」
『いや一度家に帰りなよ』
隣なんだからさ。
「それに久々に風香の手料理食べたくなって!」
『今日はカップ麺ですませる予定だったんだけど』
「年頃の女の子がそんなので夕飯をすませちゃいけません!」
『一にはご馳走するけど徹お前帰れ』
「なんでさ!」
うるさいから。
***
めんどくさかったけど夕飯をご馳走し、今夜は泊まるんだと駄々をこねる徹を一は引き取ってくれた。一マジおかん。
それが昨夜の出来事。
今は放課後 部活の時間で、ドリンクを作っている時に飛雄の声が聞こえた。
「良いか日向。お前は、最強の囮≠セ!!!」
「おおお!?最強の、囮!!おおお!?ぉぉぉ…
なんかパッとしねえぇ…」
「
速攻でガンガン点を稼いで敵ブロックの注意をお前に向けさせる!そうすれば他のスパイカーが活きてくる!」
膝をついて落ち込んでいる日向だったが、飛雄の言葉にこの間の練習試合を思い出したのか声をもらした。
「月島みたいなデカい奴が何人もお前の動きにアホみたいに引っ掛かったら、気持ちイイだろ!」
「!! うおおおっ」
月島をかばうような発言をする山口。そんな山口に対して「黙れよ山口…」はないんじゃないの月島。それに慣れているかのように「ゴメンツッキー!」って謝る山口もどうかと思うけれど。
「…逆に、お前が機能しなきゃ他の攻撃も総崩れになると思え」
『バッ…!ちょっと飛雄、あんまプレッシャーかけないの!』
「総崩れ…そうくずれ…SOKUZURE…」
ああ!既に遅かった!
「でも肝心のブロックはどうすんだよ!?」
いくら高く跳べても元々デカい奴と比べたらジャンプのMAXに到達するまでの時間がかかる。その分、ブロックの完成が遅くなる。
だから、日向がブロックで重点を置くのは相手の
攻撃をたたき落とすよりも触る≠アとだと飛雄は言う。
「日向のバカみたいな反射速度活かして敵の
攻撃にとにかく触って勢いを弱め、確実に拾ってカウンターをしかける」
もちろんそんないきなりうまいこといかないだろう。うまくいく保証はどこにもないし、相手チームにはバカにされたりもするだろう。でもやってみれば何かしらわかることがあるんじゃないだろうか。
「なにより空中戦で日向の高さに適う奴、ウチのチームじゃ月島と影山くらいだ。だから日向、自身持って行……」
「ハイ!おれ!がんばります!!高校で初めて6人でやる試合だしっ!いっぱい点とって!囮もやって!サーブも!ブロックも!クイックも!」
「ちょちょちょ、落ち着け!」
「全部っ…」
「うわぁ!?ショートした!!日向がショートしたーっ」
慌ただしい放課後でした。