短編 | ナノ



冬 4





「マジでかすぎ」
「今は良いけどさぁ。みんなと別れてから一人で歩くと本当にもう罰ゲームじゃない!恥ずかしすぎる!」

カラオケを後にして集団で歩く中、でかくて赤いお菓子の詰まったサンタブーツを抱えて歩くのは凄く目立っていた。

「さて、夕飛の罰ゲームだな」

ニヤニヤと笑う幹事。

「罰ゲームなの?まぁ寒いだけだろ…ってか、誰か時間計ってくれるわけ?」
「まぁ多分20分くらいなら俺らも見守ってられるだろうから」
「どういうことだよ…!置いて帰る気か」

駅前が近づくと、みんなの足取りが緩やかになる。
オブジェが立ち並ぶ辺りも豪華な電飾が施されていて、辺りはクリスマスのデートを楽しむ奴ばっかりだ。

「じゃ、行って来い」

背中を押されて一歩出る。
皆は一つのオブジェの影から俺を見ている事にするらしい。
なんという見せもんだ、と思いながら、大きなツリーに向かって足を運ぶ。

待ち合わせする人はそこそこ居るらしく、紛れて立っているだけなんてなんとも面白みを感じないのだけど。

キラキラなツリーを見上げて、飾られたオーナメントを見比べる。
確か去年は赤とシルバーで統一されていた物が、今年はゴールドだ。

突っ立ってるだけってのもなぁ、と携帯を取り出した。
携帯ゲームでもしてれば30分なんてあっという間だろうと思った。
そのタイミングでメールを着信したので開いてみれば、幹事からのケータイ禁止令。そういうことは早く言えよな。ずるい、と思いながら今の俺の姿を見つめているであろうオブジェに目をやる。

皆笑ってやがる!

そのうち、俺の隣で立っていた奴に待ち人が訪れ、一人、また一人と去っていく。
去って行った奴のところに、新しく待ち人が立ち、待ち人が来るとこのでかいツリーをバックに二人より沿い合って写メを撮っていく。

「……」

これは、罰ゲーム。
誰も俺を見てないけど、凄く惨めな気分になるんですけど…っ!
彼氏彼女が幸せそうに去っていくのに俺ずっと一人で立ってんだよ?
なんか、待ちぼうけ食らった可哀想な奴じゃねぇか!



「夕飛ようやく罰ゲーム分かったんじゃね?」
「かわいそ過ぎない?」
「だから女子にはさせらんねぇ罰ゲームだし、クリスマスくらいしか出来ない罰ゲームだよ」

罰ゲームを受ける夕飛を見ながら、クラスメイト達はブーツの中身であるお菓子を口にしたりそれぞれ時間が来るのを待っていた。

「ねぇ、寒いんだけどホントに30分待つの?」
「夕飛置いて帰る?面白そうだけどマジで寂しがるよアイツ」

「…なぁ、幹事。俺に案があるんだけど」
「なに、薫」

幹事の耳元で何か話をしている薫に、クラスメイト達も耳を傾けたけど、どうやらソレは誰に言うわけでもないらしい。

「あ、なかなか、…おもしろそう!で、それは誰がやる?じゃんけんでもする?」
「俺。今日罰ゲーム無しだし、特進行く前にハメはずしときたいし」
「ってか、薫が行ったらもう本物って言うか、なんかありえて怖いわ。でもまぁ…その方が面白そうだな」

「ね、なになに?何の話?薫くんなんかするの?」

「それは…お楽しみ」

幹事が面白そうに告げた。






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