短編 | ナノ
07
気を取り直して、先輩のお化け屋敷行くか・・・、なんて軽い気持ちで行けるわけも無くて、その日1日うだうだと後悔しまくってた。
それでも、なんでかそんなに悲しくはなかった。
いや、悲しかったけど、初めから可能性はなかったからな。そういう心の準備はどこかで出来てたからかも知らん。
それに先輩は俺が友達でおることを許してくれてる。
すっぱり切れたわけじゃない、それだけで嬉しかった。
翌日、昨日とは打って変わってウエイターを張り切る俺はこの文化祭最終日を休憩無しでクラスに尽くすつもりやった。
昨日の今日や、先輩の顔見れる気がせんくてお化け屋敷なんて行けるわけなかったから、時間も潰せてちょうどええ。
「七井、休憩」
「いらんわ。委員長に俺の分あげるから」
「昨日の罪滅ぼしか?」
「そんなとこ」
委員長はなんだかんだ言いながらも最終的には申し訳なさそうに俺の代わりに休憩に入った。俺は委員長の代わりに働く。
動いてな、無駄に考えてまうしな。
俺のことやから2日ほど落ち込んだらまた頑張れる気がするねん。だから今日だけ。
折角の文化祭の思い出がこんなん・・・って思うけど逆に先輩と同じ学校で過ごした思い出になってええんちゃうの。なんてプラスに持っていける。
案外大丈夫やん、俺。強いやん。
「律」
「う、わぁぁぁ!」
テーブルという名の机に置かれた紙皿とか片付けてたら現れたのはジャージ姿の蒼人先輩。
まさか先輩から現れるなんて。
「じゃない、い、いらっしゃいませ・・・」
「ん、チュロスと、コーラ」
「・・・か、かかしこまり・・・」
「今日の休憩は?・・・ってか、やっぱ気まずい・・・か」
先輩のお化け屋敷には行くつもりはなかったんやけど。先輩は俺のこと・・・待っててくれたりしたんかな。
「昨日・・・サボってたの委員長にバレて、今日は1日ココで過ごす事に・・・あはっ」
思ったより普通に喋れてるやん。
「そうか・・・ま、それも日頃の行いってやつやな。悪い事はちゃんと自分に返ってくるんやっていう・・・」
そこまで話して、先輩と一緒に来た人が俺に注文してきたから会話は途絶えた。というか、助かった。
昼を過ぎた喫茶店はそれなりに賑わってて、忙しいフリして先輩に近づかんようにした。
いつもの俺やったら、きっとそっちのけで先輩にまとわりついとったんやろな・・・
でも、さすがに今日はできへんわ。
先輩達が店を出てくのを見届けて、それから時間見て、文化祭の終わりが近づいてんのを感じて、
やっぱり告白するんやなかったかなって、ほんま、少しだけ思った。
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