短編 | ナノ



09




「と、とりあえず、謝る!謝るから・・・っ、・・・泣き止めよ・・・な?」

なぜか、慌てる尚。

「もうっ、良いよ・・・」

「成?」

「疲れる、よっ・・・尚のことっ、好き、だけどそれだけじゃっ・・・ダメ、で」

尚にも同じだけ・・・思われたいって
もっと、俺のこと見て欲しいって

「・・・成?」

また、あの時と同じように俺を優しく抱きしめる尚・・・。

それを突き放すことをしなかった。
離れたくなくて。もっと、もっと傍に居たくて。
背中に回した手で必死に引き寄せた。

「尚に・・・とっての、・・・っ・・・一番が良いのに」

俺は一番じゃない



「成・・・俺が、誤解させてるみたいで、辛い思いさせてゴメン。」

「ご、かい・・・」

何を。
一体何が誤解だと。

「女っ、居るのっ知って・・・っ」

また、泣いて頭が痛くなってきた。
言いたくないのに、言わなくちゃ判ってなんてもらえなくて。


「成、違うから・・・」

「何をっ・・・嘘、つかないで、良い・・・」


ポンポンと、頭に手を乗せて俺を慰めるようなその仕草を、こんな時でさえ嬉しいと思う俺はもうどうしようも無いのかもしれない。
尚の事・・・嫌いになんてなれなくて・・・


「成・・・しょ、正直に言うけど、引くなよ?」

明らかに腫れてる事が判る自分の目。
それを開いて、尚を見上げる・・・

「宮本、の所行ってた。」


やっぱり、尚は女が良くて
自分から切り出そうと思った言葉を
きっと尚の口から聞くんだと思うと

思わず、耳を塞いだ

「っ、聞け、成っ。」

頭を横に振って、尚の言葉を拒絶した。


「―――っ」

ぐらりと体が揺れ、視界が広がった。

目の前で俺を見つめる尚の後ろに、部屋の天井が見えた。

ベッドに倒されたのだと、理解した時には耳を塞いでいた手は尚の手によってベッドに縫い付けられていて。

顔を近づける尚が

そっと耳朶に口をつけた。


「―――っ、な、尚!?」



「成が好きなんだって。」


耳元で、切羽詰ったような尚の声が
脳にまで響いた気がした


「成が、好き過ぎて。・・・宮本に相談聞いてもらってた。」

尚の言葉が自分にしみこんでいく
痺れているような、そんな感覚に
喉が締め付けられているようで

声が出なかった。

視界には尚が居ないのに

耳元に届く声と温かい吐息は確かに尚のもの





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