短編 | ナノ



08





side:成


目の前の視界がぼんやりしていた。

目を擦ると少し痛くて

あぁ、昨日・・・泣いたんだと


またその時の感情が蘇ってジワリと目頭が熱くなった。



昨日、あれから携帯の電源を落とし、風呂に入り自分の部屋に閉じこもって・・・

布団に包まって、思うがまま泣いた。

泣いて、泣いて、スッキリしたかったのに
目が覚めればあまり変わってなくてがっかりした。

携帯のアラームで毎日目覚めてたから、起きた時はすでに遅刻で、もうめんどくさくなって1日サボった。


どうしようか、
こんなに疲れるなら・・・
また前に戻って

顔もあわせない日々の方が
楽かもしれない


また、こぼれ始めた涙を手で拭った


ガタガタと、玄関からの物音にビクリと反応した。
その物音は足音に変わり、慌しく階段を駆け上がってくる。

言い知れない恐怖を感じて、思わず部屋の扉を見つめた・・・


「成っ!」

勢いよく音を立てて開いた扉

「・・・尚」

慌てて駆け寄る尚に思わず布団をかぶって身を隠した。

「ちょっ、成!?」

「・・・・・・やだっ」

布団を引き剥がそうとする、その尚に抵抗して、ぎゅっと布団を握り締めた。
その俺の抵抗を感じてか、布団を引っ張る力が消えた。


「成・・・熱でも出たかと思って、大丈夫か?」

そんな、言葉・・・
尚の本心から出た言葉なのか
ただの・・・愛想でしかないのか

またぐるぐると考えを巡らせる、自分が嫌になった

「・・・だいじょうぶ・・・」

「成?・・・顔、出せよ」

「・・・・・・」

きっと、今尚の顔見たらまた泣いてしまうから。
そんなの・・・イヤだ。

「大丈夫だから、帰ってっ!!」



「何、何か拗ねてんの?」



「―――っ、尚がっ!!」

頭にきて思わず布団をめくり上げ尚に突っかかった・・・

目の前の尚が、目を見開いて俺を見てた。
あ、と気付いた時にはすでに遅くて
慌てて顔を隠そうとしたけど、尚の動きの方が早かった。

腕をとられ、顔を覗き込まれる


「泣いてた、のか・・・。」


そんな尚の言葉にジワリと涙が溢れてきた

もう、尚の事で涙を流すことは無いんだと
そう思っていたのに・・・
結局、尚は俺のものにならなくて
そのことが悲しくてまた泣いての繰り返し。


「何で・・・って、俺か。・・・だよな?」


言わなくちゃ
俺から言い出したのだから

俺から終わりも告げなくちゃ・・・





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