短編 | ナノ
05
◇
「わぁっちー!」
慣れない料理は悪戦苦闘。
昨日尚が帰ってから料理本を見たけど作れそうな物は炒め物くらいで。学校からスーパーへ寄り、帰宅してから作る事を考えてもオムライス程度かな?と思って。
オムライスと野菜炒めと作る事にした。
学校帰りにスーパーに行って慌しく買い物を済ませると着替えて早速料理に取り掛かった。
フライパンに腕が当たり火傷したり、油を熱しすぎて入れた野菜の水分で油跳ねで熱い思いしたり・・・。
包丁では何度も指を切り、指先に絆創膏が増えていく。
何とか出来上がった料理は見た目にも綺麗とは言えない代物で。とりあえず、尚が来るまでに作れてよかった。
テーブルに料理を移し、キッチンの掃除にかかる。
恐ろしいほど散らかったそこは結局一時間近く、掃除する羽目になったのだけど・・・
そんなことよりも、それだけ経っても尚が来ない事の方が不安で、不安で仕方なくて。
今日は登下校でも、学校でも会うことが無かったけど、今日も一緒に夕食食べるというのは尚が口にしたことだ・・・
時計を見れば20時前。
食事したって、結局昨日みたいにすぐ帰ってしまうのかと思うと、逆算しても食事の時間しか残ってなくて。
冷めた料理を前に、またため息しか出なかった。
結局それから30分経っても何の連絡も入らないから、こっちからメールを送った。
すぐにメールが返って来たのは良いのだけど・・・
“わりぃ、今からダチのトコ。弁当置いといてよ明日もらうから”
クラリと視界が揺れた気がした
「俺のところには居れなくてもダチの所にはこんな時間でも行くのかよっ!誰が今日も弁当だって言ったよ、バカヤロ・・・っ」
って、尚には絶対言えない文句。
むしゃくしゃするその勢いのまま、スプーンを掴んで目の前のオムライスを口に運んだ。
尚が食べないなら、自分で全て平らげるまでだ。
「・・・・マズイ」
味見なんてしてなかった。
薄すぎるその味付け、素材の味を生かしたんだ、なんて言えないくらいの物で、何が焦げたのか苦味だけは強かった。
野菜炒めも、焦げた味と調味料間違えたのか変に甘ったるい食べ物に化していた。
こんなのを尚に食べさせようとして。
結局食べてくれなくて。
良かったんだよ。
「―――・・・っ」
ゴミ箱に、料理を詰め込みながら
頑張って作った料理が不味くって、悔しくて。
尚の中での優先順位、俺の位置が下過ぎることが・・・悔しくて。
悔しくって、悔しくって・・・涙が出た。
prev|back|next
[≪
novel]