短編 | ナノ



04




ガサガサとスーパーの袋を床に置いた。

「か、買いすぎた・・・」

コンビニだとジュースも高いし、と結局学校の帰りに家から一番近いスーパーへ買い物に行った。
スーパーの惣菜やお弁当を買い込んで、帰宅したのは6時。ちょっと時間掛けすぎたけど、夕食にはちょうど良いかも。

弁当を机に並べて、飲み物を冷蔵庫へ入れると自室へ向かって着替えた。

尚が何時に来るか判らないから、リビングでソファーに座りテレビを見ながら時間をつぶす。

来ないんじゃないか、とかちょっと思ったけど、7時を回ってすぐに玄関から物音が聞こえた。


「よう成、飯、食おうぜ」

「あ、お帰り・・・」

リビング開けて第一声がこれだ。
“ただいま”とか言って欲しかったな、なんて甘い考えも浮かびつつ、弁当をレンジに入れた。

「尚、鮭弁と鶏から弁当、どっちが良い?」

「鮭。」

「俺の部屋で食べる?」

「いやー・・・ここで良いだろ?めんどくせぇよ」

「・・・そう」


レンジから音が聞こえて、弁当を取り出しテーブルに並べた。

ソファーから食卓へ移って来た尚とすれ違ってドキリとしたけど・・・今日の尚からは女の匂いがしなくて、思わず顔がほころんだ。

テレビを見ながら、テレビに夢中になってる尚だけど。それでも俺は嬉しくて。
たった二人での食事がとても貴重な物だった。


長く、続けば良いと思った時間はあっけなく終わりを告げた。


「え。もう?」

「あー・・・うん、もうこんな時間だし」

「お菓子とかあるよ」

「明日も親居ないからこっちに来るよ、その時食べようぜ?今日は腹一杯だし・・・」

「・・・そう。」


まだ21時・・・5分前だ。
こないだは友達の家に22時を回っても居たんじゃないの?なんで・・・俺とは一緒に居れないの。

テーブルに置かれた弁当のゴミを捨てながら、そんな自分の問いかけも捨てた。


「じゃぁ、また明日」

「おう、ごちそーさん。」


そう言ってあっさりと隣へ帰った尚。

隣の家なのに。

尚だって今日は親居ないんだから、もっと居たって、風呂だって入って帰ったっておかしくないのに・・・


「―――・・・な、んでかなぁ・・・」


玄関で、尚が消えた扉を見つめた。

リビングから聞こえるテレビの明るい声がウザかった。


以前は些細な事でさえ尚の事に関してはこぼれた涙は、今では逆に泣けなくて。
言葉を、貰ったから泣くなんておかしいじゃないかと、そう思ったら簡単には泣けずに、どんどんストレスが溜まっていく。
そのストレスも結局は自分の被害妄想が激しいからだろう?とあざ笑って。


「明日は弁当じゃなくって、夕食作ってみようかな。」


尚とするはずだった会話は結局、全てひとりごと・・・

小さく笑うと、母さんが持ってた料理本でも見ようか、とリビングに戻った。





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