短編 | ナノ



03






「はぁ・・・」

学校へ向かう道

尚と気持が通じた時はとても嬉しくって、学校に行くのも嬉しく感じてたけど、そんなの2ヶ月も経てばあっという間に以前となんら変わらなくって。

まぁ無視されることがないだけ十分幸せなんだけど・・・


もう高校生だし、一緒に学校へ通うことは無いけどクラスも違う俺達は、会おうと思わないとなかなか校舎内では会わない。
会わないって事はもちろん会話も少ないわけで・・・。


「・・・・はぁ。」


今日から母さん達は祖父母の所だ。
自分で夕食を作るのは・・・めんどくさそうだから帰りに何か買って帰ろうかな、なんて・・・あえてそんな事ばかり考えてみる。


「成!」


尚の声はとても俺の心を動かす声で。
それは中学校に上がってから声変わりして、ますます俺を翻弄させた。

静かに振り返るとちょうど登校して来たところの尚がこっちへ向かって歩いてきていた。

「おはよう、成。」

「は、よ・・・」

「?元気ねぇな。 今日からだよな、おばさん達居ないの。」

「何で知ってるの」

「朝から母さんが言ってた。夕食家来いよ、って言いたいけど、家も今日親いねーの。だからお前ん家で何か買って食おう。」

「・・・・判った。じゃぁ俺買って帰るよ、親からお金貰ってるし・・・何食べたい?」

「んー、コンビニ弁当とかで良いんじゃないか?」


笑いかけてくれる、その尚の顔を見て、胸が跳ねた。
やっぱり自分はこんなにも尚が好きで
尚しか居なくって、尚じゃないとダメなんだ。

尚にもそれくらい、自分の事を想って欲しいだなんて贅沢かな?

そんな顔を俺以外に見せないで、っていう独占欲。

尚を好きになってどんどん汚い考えしか浮かばなくって。尚からも好きだと言われてからますます酷くなっているのに。


「釣った魚に餌はやらない・・・・か。あ、違う釣られる時も餌は無かったか・・・」


結局1人で踊らされて・・・
1人で勝手に釣られて、きっと尚は釣った魚の存在さえ忘れているのかも知れない。陸の上で水も与えられず干からびていくんだ。俺は。


「何・・・言ってんだ?成やっぱ元気ないのは体調悪い?お前熱出したらトコトンだから早めに言えよ?」

「う、ううん!なんでもない・・・」


尚と教室前で別れて、自分の机に向かう。
俺と尚が幼馴染だって言うのは小・中学校と一緒だった奴らは知ってることだから、今までケンカしていたんだろう、位にしか思ってなくて。
最近話しをしている俺達を見て「仲直りできて良かったな」なんて声を掛けてきた。

授業中も、尚は何が好きだっけ?とかお茶家にあったかな?とか食後に食べるお菓子も買っておこう・・・なんてワクワクしている自分に笑えた。

なんだかんだ言っても尚が家に来るのは楽しみで。

今日はきっと早くに来てくれると信じてるから、尚から女の匂いはしないはずだから・・・。

だから、楽しみなんだ。






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