短編 | ナノ
02
「成、ちょっと話があるの」
夕食の途中で、そんな母親の言葉に箸を止めた。
「何?」
尚が家で夕食を取る事が増えたけど、そんなに毎日来るわけじゃない。尚の親だって居ないわけじゃないし、尚にだって付き合いがある。
男同士の付き合いだって、相手が女の場合だって・・・きっとある。
尚が顔を覗かせない日は、正直ホッとした。
会いたいのに会いたくない。なんて・・・天邪鬼な・・・。
「実はね、さっき義父から電話があってね・・・」
「おじいちゃん?」
「そう、おばあちゃんが具合よくなかったでしょう?それでしばらく入院することになってね。お母さん明日から4・5日おじいちゃんとおばあちゃんの世話に行こうと思うの。」
「父さんは?」
「お父さん、仕事は休めないけど不安だろうし一緒におじいちゃんの所行こうと思うわ。でね、成も行く?4・5日と言えどもあんた1人にさせるのもねぇ・・・」
「俺はいいよ。行ってきなよ。」
「だって、ご飯とかどうするの?」
「冷蔵庫漁ってなんか作るよ。もしくは何か買って食べるし・・・それに尚の家だって・・・ある、し。」
頼りになるかどうかは置いといて・・・。
「そう?・・・そうね。じゃあ母さんからもお願いしておくわ。何かあったらすぐ連絡してよ?」
「うん、もうそんな心配される年齢じゃないよ・・・」
「何言ってんの、こないだ家の鍵閉め忘れて遊びに行ってたのは誰よ!」
「・・・。」
母さんが居ないのなら、尚が家へ夕食を食べに来ることもない。そうなればあんな匂い嗅がなくて済む。
結局、距離を置いた方が過ごしやすいなんて・・・
俺って報われない・・・
目の前の白身魚をつつきながら、小さくため息を吐いた。
自室にこもって、携帯を弄る。
尚はメールも電話も嫌いだ。最低限の連絡しかよこしてこないのは昔から。
こっちから何かメールを送ったって、どうしても返事しなくちゃいけないこと意外は返事さえしてこない。
俺の気持を受け入れてくれてから・・・少し返事の言葉が多くなったり無駄話も文中に入れてくれるようになったけど・・・
やっぱり俺を求めてくれてる感じが伝わってこなくって。
時計を見れば22時を回った所で
さすがに夕食も食べ終わってるだろうし、部屋にでも居るかな?と携帯を開いてメール画面を呼び出した。
メールや電話をするのは
いつも俺から
“何してる?”
今日の学校の話とか、両親が祖父母の所に4・5日行く事とか、もっともっとメールを打ちたいのだけど、いつも打ち込んでも当たり障りのない文にして消してしまう。
長く打ち込んだところで返事なんて期待できないから。
しばらくして返って来た返事には
“今ダチんとこ”
とだけ書かれていた。
ダチって?友達?
それが男か女か、なんて聞くことも出来ずに
ただ自分がメールを送ろうなんて思ったことを後悔するだけだった。
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