短編 | ナノ



01





あの日、強引に?告白させられて

見事OK返事をもらった・・・はずなんだけど。

“好き”という気持を受けて止めてもらえるのと

“付き合う”って事がイコールだって思ってたのは俺だけ?

またちゃんと付き合ってくださいって、告白しないとダメなのかな?







「成・・・」

「あ、お帰り」

「おばさん飯だって」

「うん、下りる。」


あれ以来、尚はよく家でご飯を食べるようになった。

早くに家に来た時は夕食までの時間を俺の部屋で過ごして・・・今日の出来事やクラスメイトの話しをする。



遅くに家に来た時は・・・・

ほのかに女性の香りがするのは・・・


気のせいなんかじゃない。



今日だって、部屋で遊ぶ時間なんて無くて、夕食ギリギリに家に来た尚は・・・きっと。

「成?行かないのか?」

「うん、行く。」


優しく俺の手を取る尚に・・・嫉妬を抱いて。
そしてやっぱり近づけば香る女の香りに、顔を上げることなんて、目を合わせることなんて出来なくて。

そんな日の夕食は決まって美味しくなかった。



あの日の尚の好きなのは俺だけだと言った言葉は俺の聞き間違えなのかも。
あの日の優しい温もりも、優しいキスも、全て幻だったのかも。

だって―・・・

あの日から一度も好きだと言われていない
あの日から一度も抱きしめられていない
あの日から一度も・・・キスしてもらってない

なのに尚は女の匂いをまとって帰ってくるんだ。

全てが嘘で・・・

嘘だと思いたくて

尚がこうやって家に来るようになって、二人で過ごす時間が増えて、昔のように会話を交わすことが出来て・・・それが事実で嬉しいのに。
現実はまだ胸が痛む日々の繰り返し。

以前の方が良かったとも思えないし
今の方が良いとも言えない。

どうしたら良いんだろう。

どうしたら、尚を振り向かせることが出来るんだろう。

俺だけを見ていて欲しい。
尚の瞳は俺に好意を抱いている、と感じているのは俺の錯覚でしかないのかな。

それとも尚は俺のことを好きだと言うけど

それは幼馴染を無くしたくないだけで
ちょっと使える仲の良い友達を失いたくないだけで
ギクシャクした関係に疲れていただけで

ただ、それだけなのか

それとも本当に俺を好きでも男相手だから
やっぱり女性に惹かれるのだろうか。

俺はそうやって・・・・尚にとっての二番目に居続けるんだろうか?

二番目でも良いんだ。と思えたのは初めのうちだけで・・・傍に居れば欲だって出るんだよ。

もっと尚と触れ合いたい。

俺だけを見ていて欲しい。

俺との時間だけを過ごして欲しい。





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