LALALA | ナノ



LALALA
06





「光流…」
「どうした、洸祈は呼び出し?」
「あぁ、この前の英語の小テストひどい点だったんだ」
「そうなの?英語って・・・俺のクラスの方が洸祈のクラスより進んでなかったっけ・・・言ってくれたら教えたのに。陽兄には教えてもらってなかったのか?」

こんな時に光流の顔を見るのは気分いいもんではなかった。ましてやその口から陽輔の名前が飛び出すんだから、もう神様ってひどいよねーなんて言いたくなる。

「小テストがあるって事自体聞き逃してたんだって。別の教科教えてもらった日だった。おまけにテスト後半寝てしまったという・・・」
「残念なヤツだな」
「だろ、かわいそーだぜ俺。センセーにはグチグチ言われるし。さすがに本気で寝てたとは言えなかった」

そんな会話を職員室前でしていると、通り過ぎていく生徒の視線を集めている事に気付いて口をつぐんだ。
笑いながら視線を外した俺に敏感に光流が反応を示した。

「ごめん、洸祈・・・」
「は?なんで光流が謝るんだよ、おかしなヤツだな。そりゃ双子が揃ってたら皆気になるもんだよ・・・」

俺たちは周りがどう思っていようが、仲がいい。
容姿を見ただけの周りの奴等は俺が光流に対する劣等感でひねくれてるのだと、俺と光流の仲がぎくしゃくしているものだと…勝手に思い込んでいるらしいが。
昔は幼さから光流を妬みもしたけど、結局は同じ血の流れた兄弟。いや、兄弟よりも濃いと思う双子。本気の決別なんて事には至らない。

光流の方が、傷つく俺を見て傷ついていた。
それに気づいたとき、馬鹿らしいって思った。俺が抱く妬みはお互いを傷つけるだけしかない。ただの無駄な感情だった。
そんな優しい光流に俺が何を返せるわけでもなくて、どちらかといえば迷惑ばかりかけているんだから、俺の感情一つで傷ついて欲しくなんてない。

いつだって光流の前では笑っていたい、心から。

――そう思っているのに、あの日から、光流を見れば必ず陽輔の顔が浮かんで、上手く喋れない日や笑えない日がある。それを光流はどう思っているのかは知らないけどきっと俺の心情を勝手に読み取って心を痛めてたりするんだろう。

謝らないといけないのは俺の方だ。

「じゃぁ…行くわ俺。こんなとこに居たらまた先生に捕まるし」
「あぁ、じゃぁな」

困った表情の光流にそう言ってその場を去ると、俺たちを珍しそうに見ていたヤツも散っていった。
そんな好奇の視線の中に、陽輔が光流に抱くような感情が混じっていることに気付いていた。憧れから始まった光流への興味は男女問わず、恋愛の対象にさせてしまう。それだけ、光流には魅力があるってことだ。

今では減ったものの、中学時代には光流へのラブレターを預かったり、間違えられて告白なんてこともあった。
光流の代わりで、付き合いを強要されたことも、俺が気付かなかっただけで相手が光流を見る目で俺を見ていたことも、あった。
傷ついたって時が経てば薄くなっていく。
陽輔に代わりとして扱われることに比べたら、あんな傷は大したことない。







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