LALALA | ナノ



LALALA
17






「早かったんだな、光流」
「そうか?まぁまたすぐに出て行くよ。二人の邪魔をするつもりはないからさ」

光流の視線が俺と彼女と、そして俺の持っていたペットボトルへと移って行く。
衝動的に、彼女の腕を掴み、光流の視界から逃げた。

「ちょ、ちょっと痛いっ、」

苦痛を訴える彼女の声なんか頭に入ってこなかった。自分がどの程度の力で彼女の腕を取っているかも分からない。
自室に彼女を連れ込むと、扉が閉まる音をしっかり聞いて、そして彼女をベットに放り投げた。自分の感情がコントロールできなかった。

「――ヤダ、ヤダっっっ!!」

遠くで彼女の嫌がる声が聞こえる。それでも止める気はなかった。
何を今更。俺達は彼氏と彼女だ。今まで身体も重ねたくせに、何を今嫌がる事があるんだ。

「光流が居るから?だから嫌なのか」

顔を強張らせる彼女を見ても、俺は貼り付けた笑顔だった、それしか、なかった。

「やっ、やだ、やだよ」
「聞かせてやれば言いんじゃねぇの?光流に――っ」

叫びながら、彼女が振り上げた掌が、俺のこめかみに当たり、その直後、左の目に痛みが走った。きっと指先が目に入ったのだろう、じわりと湧いてくる涙と沁みるような痛み。
それさえも、今の俺には気にならない、けれど彼女を抑えている力を和らげるには十分だった。その一瞬をついて、彼女が俺の脇から逃げ出した。

「最低ッ!!!」

彼女がそう言って扉を開けようと動くよりも先に扉が開かれた。

「おい洸祈っ」

物音か、争う声か、耳にした光流がそこに立っていた。
逃げだして、崩れるように光流の腕を取る彼女の姿を、俺は冷めた気持ちで見ていた。

「何やってんだよ、洸祈――」

彼女を支えるように手を貸す光流の腕。
その二人の姿を見て笑いがこぼれそうだった。自分の懐に入ろうとするものは全て光流あっての物で、結局は流れる水のように、光流に向いているんだと。
ほころびそうになる口元を隠して、俺はその二人の脇を通り抜ける。

「待てよ洸祈、」
「光流には関係ないだろ」

あぁ、最低だ。
誰が?俺がか?

「それでも彼女を泣かせた謝罪くらい、言え」

はっとして彼女を見た。頬を赤らめ、怒りを含んだ戸惑いの表情、涙を溜めた瞳を見て、罪悪感がこみ上げた。
感情にまかせて動いてしまった俺の行動が、どれだけの恐怖に落としたのか。

「……ごめん。――でも、」

訊きたい、けれど訊くのが怖い。分かっている答えをわざわざ彼女に言わせるのか、そしてまた俺はその言葉を耳にして、落ち込んで、諦めて…結局何も変わらない。

「…、別れよう」

小さく首を振って言葉を吐いた。
せいぜい光流に慰めてもらえばいい。それでさっきのお詫びくらいには値するだろう。堪えていた笑みは結局最後まで我慢できずに表に出てしまった。この場をおかしいだなんて思っているのは俺くらいだろう。
光流の前で、本当はお前も光流がいいんだろ?そう、訊いてしまえば良かっただろうか。肯定する彼女を見て、光流はなんて言うだろう、なんて思うだろう。

可哀想だ、と俺を哀れむだろうか。





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