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LALALA
15









「え?あ、あぁうん。そう。誰も仕事しなくってほんと参るよ。俺が委員長の尻拭いまでさせられてるとかありえなくない?」

――昨日、遅くに帰宅した光流に委員会でもあったのかと尋ねたらそんな返事が返ってきた。光流と陽輔が会っていたという事に俺は知らないフリをしておくべきなんだろう。
何も感じたくない。何も知りたくない。何も、気づきたくない。

「――上野くん?」

少し高くて柔らかい声に意識を引き戻された。
意識を戻すと、校舎から吹き抜けてくる風がきついな、ぼんやり考えるだけだった。

「あ、あぁ」

現状とは全く違う事を考えていたなんて目の前の女には何も分からないことだろうけど、申し訳程度に悩むそぶりを見せた。
短いスカートから伸びた足。ベージュに染められた長い髪。ほんの少し恥らうようなそぶりを見せながら俺に告げた言葉。

本当は、光流目当てなんじゃないの?
光流と近づきたいから、手短な所で光流と付き合っているっていう擬似恋愛を楽しみたいだけの…可哀想な、女なんだろ。

「良いよ。ほんとに俺で良いの?」
「えっ!?良いの?」
「自分からコクっといて聞くんだ?…とりあえず形からで良いなら付き合うよ」

そこには心が無いって事を伝えて。いつか心が伴えば良いなんてこれっぽっちも思ってない。きっと相手だって同じだろう。

「ありがとう!…じゃぁ帰りどこか遊びに行こう?また後でメールするから」

チャイムと共に言うだけ言って手を振り、校舎に消えて行くその姿を静かに見送った。申し訳ないとかそんな感情が湧くわけもなくて、ただお互い様だとしか思わなかった。お互い偽ってただ傍に人を置くだけ。

「好きだったっけ?あいつの事」

背後から聞こえた声に振り返ると翔吾の姿があった。いつから見てたんだ、なんて聞かなくてもきっと初めから見ていたんだろう含んだ笑い顔。

「さぁ?誰かもわかんない。クラスも知らねぇ」
「ひでぇ」

くくっと笑った翔吾はエメラルドグリーンのシャツを着てた。
オッサンみたいだ。

「お互い様、だと思う」
「え、光流狙いだったのか?そんな事言ってたっけ?」

ほら、翔吾は最初から俺等のやり取りを見ていた。

「言ってないけど…知りもしない俺に告白ってありえないだろ?俺の、…何が好き?どこが好きだってんだ?」
「んな言い方すんなって。最近心が荒んじゃってんじゃない?少なくとも俺は洸祈の事スキダヨォー」
「はいはい」
「うわっ、そのあしらいなんか傷つくなぁ」

翔吾が心配してくれている事にも気付いている、でも何一つ話せそうになくて、それでもこうやって友達の位置で馬鹿やってくれてればその間だけでも俺はそこに居て良いんだなって、感じることが出来た。

女に告白されて、断るつもりだった。いつものように。
でも女が居れば理由付けして陽輔の家に行かなくて済むだろうっていう、安易な考えが浮かんで、その言葉に答えただけだった。


放課後翔吾と少し時間を潰してから、下駄箱に向かった。靴を履いて、校舎を出ると駐輪所の脇で女が小さく手を振り立っているのを見つけて笑顔を貼り付けた。

「じゃな、洸祈」

少し大きめに声を出した翔吾に手だけで挨拶を済ませて別れた。

「ごめん待った?」
「ううん全然。今日は予定無かった?」
「ん、大丈夫」

門を出るところで携帯が震えているのに気付いて開くと陽輔からのメールだった。昨日の今日で顔を合わせる気分にもなれない。それどころかこれを機に少しずつ距離を置ければいい。

傍に居ても、離れても、辛いのは同じだと分かっている。
陽輔からの呼び出しのメールに返信することなく、また携帯を閉じた






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