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LALALA
13






陽輔を思う幸せな気持ち、光流の代わりでしかない悲しい事実。陽輔の感情に俺が必要のないもでも俺の身体に欲情し、果てる陽輔に満足だった。
何を言ったって何を思ったって陽輔は俺の肌を感じてるだということだけは事実だった。

なのにあの時からそんな感情さえも湧かずに、無心で陽輔の家に向かうのが日課になった。陽輔が呼び出そうが出さまいが、…俺には関係ない。
俺の感情は必要なかった。あの時の天井の風景はきれいに記憶に残った。
その記憶と共に、自分の求めているものが手に入らない空しさも記憶された。

陽輔の呼び出しは関係なくなった。
やけになって陽輔の家へと向かうことが増えた。それはただの時間つぶしのように。
連絡を入れずに行くものだから、たまに陽輔が外出して家の前で待ちぼうけを食らったりしても、それに関して俺も何も言わないし、陽輔だって何も言ってはこない。
家に居たってどこに居たって時間をもてあますのなら、陽輔を待っている方が、陽輔に抱かれている方がマシだった。

もう振り向いて欲しいとか、そんな欲さえ捨ててしまえばいいのに、なかなか出来ないで。自分の事なのにどうしても思い通りにいかないのだ。
だから何も感じない心が欲しい。
もう、抱きしめてもらいたいと思う腕はない。


そして今日もまた肌を合わせるだけの、その体温だけを求めて足を運んだ。
入り口を曲がり、建物のエントランスにその姿を見つけて自分の体に電気が走るように、ヒクリと震えて動けなかった。
後姿だけだった。けど見間違う事のない、光流の姿。
隣に陽輔が立っているわけではなかったけれど、この建物には陽輔を訪ねに来た以外理由が無いだろう。

光流の姿が奥へと消えていっても、その場から動けなかった。
何か用事だろうか、でも、何の?
母さんが何か持たせたのかもしれない、陽輔にって。
幼なじみなんだからたまに会う事もあるだろう、家をたずねる事だってあるだろう。

ぐるぐると無駄に回る思考のせいか、酔ったような気分の悪さがこみ上げてくる。
用事を済ませて出てくる光流と顔を合わせる気分にもなれなくて、そのまま来た道を慌てるように戻った。
どこかでしばらく時間を潰そうかとも考えたけれど、光流がいつまで陽輔の家に居るかも分からない。今日はもう陽輔の家に行く事は出来なさそうだと思うと、素直に自宅に戻るべきなのか。

時間を確認するために開いた携帯には4通の未開封メールがあった。うち3つが翔吾からのもので、残りの一つが、

「陽、輔…」

開いたメールには「今日は来るな」と文字の羅列だけだった。スッと入ってきたその言葉に理解をしても、何度も何度も視線はその文字を繰り返し脳に伝えようとしていた。
光流が来るから。
俺にはその場に来るなと――。

二人が会ったからと言って何が起こると決まったわけではない。何もない、といくら言い聞かせるようにしたって簡単に気持ちは治まらなくて、不安が自分に襲い掛かってくる。
もしも二人が、と思えば自分の必要性が益々感じられないだろう。
むしろそうなれば…自分の存在は邪魔だった。
ズルリ、と踏み出した足を何とか前へと運び、自宅に帰ることだけを考えた。

邪魔だなんて、今更だった。思えばずっと俺は邪魔な存在なんだ。ただそれを光流が感じさせなかっただけ。陽輔が身体だけでも使い道があるんだと思わせてくれただけ。
携帯を閉じると握り締めたままポケットに突っ込んだ。






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