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LALALA
11





 ―――yousuke

携帯を閉じて、頬が緩むのが抑えられなかった。
久々の光流の声、久々の光流からの電話。
幼い頃から自分にいつも着いて回ったそっくりな二つの影。

いつから―…その一つの姿に惹かれていったのか。

光流、お前だけを俺の傍に置けたのならどんなに良かっただろう。
お前の半身を持つ洸祈にどれほどの嫉妬をしただろう。
いつだって洸祈の事を考え、洸祈への影響を考えながら動く光流を何度開放してやりたいと思ったことか。

俺が実の兄なら、もっと傍でお前達を見ていれたのなら、光流が自分だけの為に毎日を楽しく過ごせていたんじゃないのかと思った。俺がそうさせてやった。

長男としてのプレッシャーを知っているから。泣き言一ついえない立場で、守る者がある羨ましさと、その誇らしげな態度を何度…泣かせたいと思ったことか。

もっと俺を頼ってくれれば、どろどろに甘やかしてやれるのに。
もっとだ、もっと。洸祈のことでしか光流の弱いところを引き出せない。
そしてまた洸祈に嫉妬した。

携帯のメール画面を呼び出して、光流を思い描きながら洸祈へのメールを作る。
洸祈には申し訳ないことをしているって思っているのに、わかっているのに、止めることができなかった、薬中のように、ひどく心が乾くんだ。
光流を求める心が、洸祈で潤いを求めた。乾くと気が狂いそうになる。そんな、錯覚。

そうだ、所詮錯覚だ。誰よりもわかってる。
あの時、恥ずかしさよりも同姓を思う後ろめたさからとっさに洸祈を引きずり込んだ。罪の気持ちよりも、あの事実を口にされる事の方が何よりも恐怖として襲い掛かった。

咄嗟に洸祈と秘密を共有することで口を塞ごうと思った。その時はそれだけだった。
光流とは似ていだけで光流本人ではない。その虚しさは増幅していくだけだった、そこに罪の意識を織り交ぜてみては洸祈を抱いて憂さを晴らして……

取り返しのつかない行為は、もう止め方すら分からなかった。いつまで続くのか、俺はいつまで光流を思い、洸祈を傷つけ生きていくのだろうか。



簡単なメール文を打ち込み、送信する。

きっと洸祈からは返事なんてものは返ってこない。俺と洸祈の関係は修復なんて出来ないだろう。俺が光流の思いを断ち切ったとしても、もう、どうしようもない。

時折見せる洸祈の仕草をいとおしく思ったってもう遅いのだ。
洸祈を大切になんてする資格も、俺にはなくなってしまった。
そんな現実から目をそむけるようにますます洸祈に光流を重ね続けている。

何より洸祈は俺の事を嫌がっているに違いなくて、俺が望んだ所で以前のような幼なじみには戻れないだろう。
光流に想いを抱き始めたところから、この関係は崩れる他無かったんだ、関係の無い洸祈はただの被害者。

重い気分を吐くように溜息をつき、新しい空気を肺に入れるために深呼吸をした。
 

光流が俺に会いに来ると思えばそれは洸祈を身代わりとしていた俺にとっては喜ばしい事だった。けれど“洸祈の事で”と言った事に不安も湧きあがる。
もし、この関係がバレていたら…
どうする?洸祈がバラしたのか?それなら洸祈を交えて話をするだろう。…洸祈が何かバレる様なことをしたのかもしれない。

ここ数日の洸祈を思い返してみても、何も気になる行動もなければ落ち込んでいるそぶりなんて見せていなかった。
何か相談事があったって…昔のように相手にはなれないだろうから、洸祈だって俺にはもう何も言ってこないんだろう。

幼い頃、洸祈はいつも光流の背中に隠れるように立っていた。大人しくって、でも話しかけると花が咲くようにニッコリと笑った。
光流と比べられるように向けられる視線と言葉に対して。その不満を俺にだけは打ち明けるようになってから光流の背中に隠れる洸祈を見ていない。俺が支えになってやれてるのかとその時に気付いたんだ。なのに俺は自分達の事を何も語らない光流の強さに惹かれた。

そして、この自分の腹の底にあるのは、あの強さを崩してみたいという事なんだろう。

昔の関係を思い出して少し寂しく感じた。
壊したのは俺自身。
もう二度と取り戻せない。





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