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LALALA
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心当たりなんてありすぎて、いつ洸祈を傷つけているのかさえ俺には分からない。そんな事を言えば、俺の存在自体が洸祈にとっては疎ましいものでしかないのに。
出合ってわずかしか経っていない石川に、言われなくたって十分過ぎるほど分かっている事だ。
それでも守ってやりたいと思う。洸祈がいらないと言っても、俺の一方通行な気持ちでもいい。大事だった。

目立つ事をやめれば良いじゃないかと言われるかもしれないけど、小さな頃からの積み重ねは洸祈を苦しめるばかりか、俺にさえ絡まる鎖のようなモノだった。
今の作り上げた光流という人間から俺自身が逃れる方法なんて、無かった。
すべてを投げ捨てる勇気なんてない。この長男としての、洸祈の兄としての立場は逃げられないのだ。

今回も、もしかしたらと思うだけで居たたまれない。
俺が何かした可能性だってある。直接的でなくても、俺の名前を出されて洸祈が苦しんでいるのじゃないかと思うだけでちぎれる思いだ。
それでも逃げる事なんてしない。俺はどこまでも、たとえどんな形であっても、洸祈の傍に居たい、洸祈を見つめ続けたい、年老い朽ち果てるまで――。

キュッと唇を結んで、会えなかった洸祈を思う。もう、数日会話らしい会話を交わしていない。ついこの間までとは明らかに何かがおかしい洸祈に、家で会話が出来ないのなら学校でと思ったのにどこへ行ったのだ。


――携帯を開いて、久々に呼び出す番号。洸祈の異変に、陽輔も気付いているかもしれない、なんでも良いどんな些細な事でも知れるのならという思いで通話ボタンを押した。

『…光流?』

数コールで聞こえてきた声に細く息を吐いた。

「…久しぶり陽兄、今良い?」
『あぁ大丈夫。珍しいな光流が電話してくるなんて――』

驚いていた声が少しずつ和らいでいく。久々に会話を交わした陽輔は昔と変わらない。

「ちょっと聞きたい事あってさ。出来れば会って話がしたいんだけど、今日は洸祈と勉強の約束してる?」
『アイツ最近約束無しで家に来るんだ。だから約束はして無いけど…どうかな。急ぐんなら今日でも良いけど?少しなら時間空けれるし。別に洸祈が居たって大丈夫だろ?』
「――洸祈の事なんだよ、聞きたい事って。だから出来れば…」
『洸祈の、事?……、分かった今日は来ないようにメールしておくから』
「うん。また学校終わってから……うん。じゃあ後で」

携帯を切りながら、何があったって綺麗に笑う洸祈を思い浮かべ、胸が締め付けられそうだった。
陽輔に思い当たるものがなくても、俺に話せないのなら相談できる環境を作ってやりたいと思った。
幼なじみの陽輔になら洸祈も気が楽だろうと。思いつめて溜め込んでしまう前に、目の前に逃げる場所があればいいと思った。自分がその逃げ道になれればいいのだけど、今までそれが叶った事なんて一度も無い。

俺よりも陽輔の方が頼りやすいというのは洸祈を見ていればわかることだった。だから、できるだけ自分の力だけでなんとか洸祈を守りたいと思うのに、どうしてもできないことだってある。俺が原因だったら、俺になんて守られたくないだろう、俺に話しかけられたくなんてないだろう。

小さい頃から思い続けている“早く大人になりたい”と言う気持ちがまた湧き上がった。比べられる事のない生活、自立してそれぞれの道を歩み始めてやっと誰の目を気にすることなく、俺達が俺達で居れるんじゃないかって、ずっと思ってる。

「…洸祈」

窓の外を見ながら、小さく、大切な名前を呟いた。






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