鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
鮮やかであれ


鹿住13のオマケの話し



しばらく鹿本にしがみついていたのは良い、良いのだが、勢いと言うか、なんと言うか、その場の雰囲気に流されるように鹿本を抱きしめていたものの…

次は離れ時が分からない…

どどどどどうしよう。
このままも恥ずかしいし、離れて目が合うのはもっと恥ずかしい。

どうにも出来ず、体の力を抜いて身じろぐ俺に鹿本が気付いたらしい。
からかうように再度鹿本の左腕が背中を押した。

「な、なぁ鹿本」
「なんだよ」

会話を促して鹿本から離れようと試みるが、鹿本はそんなつもりがないようだ。

「離してくれない?…ほら、鹿本の腕も気になるし」
「そうだな、お前もどうやら分かったみたいだしな」
「っ、うぅ」

そこを突かれるとこれまた凄く恥ずかしい。
鹿本が俺の事を一番に思っているなんて考えは、もしかしたら自分の勘違いかもしれないのに。
そうだ、今だって「分ったみたいとか、何の話しだよ」って、そんな風に返せたらもっと鹿本を追い詰めたり…出来たかもしれないのに。
今だけでいいから、何とかこの立場を逆転できないものだろうか。

悶々と鹿本の肩でそんなことを考えていたら、トントンと鹿本の右手が俺の背中を叩いて呼んだ。

「――なに、…っ」

頭を上げた俺を捕らえたのは鹿本の唇。
食べられた、と思われるくらいパクッと唇を奪われた。

「だ、だ、ばっ、か、鹿本っ!」

ニヤリと笑う鹿本。さっきまでなら、その笑いが何かを隠した笑いにしか感じられなかったのに…今はもう俺の見る景色が違う。

「あー、駄目だ住田。…腕が痛み出したわ」

鹿本は真剣な顔で訴える。
そうだ、さっきアレだけ力入れたんだから痛くないわけない…表情から痛みは読めないけど、我慢強そうな鹿本のことだ表情に出さないことくらい簡単だろう。

「……えっ、えぇぇっ、マジ!?え、どうしよう。そうだ保健室…いや、意味ないか、病院、そうだ、病院、鹿本急いで…」

先に立ち上がった俺についで、鹿本も腰を上げる。

「ちょ、住田肩貸してくんね?」
「あ?あぁ、ほらしっかり」

鹿本の右腕を自分の肩に回わした――
つもりなんだけど、回ったのは自分の視界。

「ほんっっっと、馬鹿だな」

コンクリートの壁に押し付けられた。

「へっ?」
「腕痛いっつってなんでお前の肩が必要なワケよ。一人で歩けるっつうの、馬鹿」

馬鹿馬鹿言う割には…
今までにないくらい甘く、とろけるようなキスを鹿本が俺にした。
息継ぎすら許されない、ひたすら鹿本がゆっくりと口内を犯して、俺は鹿本のされるがまま受け入れた。

今までと変わらない。
今までだって鹿本からの施しに疑問も文句も言えなかったんだから。
俺らは何も変わってないんだろうな、と痺れる脳の片隅で考えた。

散々口を犯されて、腰が砕けて動けなくなった俺を置いて鹿本はどこかに消えた。

俺が教室に戻れた頃、鹿本は早退してて、その翌日の鹿本の左手は邪魔くせぇと言った三角巾に吊るされていて、俺はこっそり笑った。



END



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