鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
01






俺が一週間学校に来なくても、母親から風邪で寝込んでいると学校側に連絡が入っていれば誰も不思議には思わない。
一週間休み続けるなんて長引いてるんだな、とか、そんな程度。
がっちゃんは毎日メールくれて、一回だけ見舞いにも来てくれた。

それでも、その裏に隠された真実を誰も知らないんだよな。不思議なもんで。
確かに体調は崩してたけど、みんな俺が風邪をこじらせて休んでたって騙されてる。いや、クラスメイトだけじゃないや、自分の家族だってそう騙した。
自分だけが知ってて、自分だけがこんなにも地に足が着いてないような感覚になるなんて。

普通に生きてたらあんまりないよなぁ。
かと言って俺は刺激を求めていたわけでもないのに。
でも、あんな刺激的☆な事…多分、二度と、ないだろう。
刺激的と言うよりは衝撃的?
レイプって言ってしまえばレイプだ。
でも俺は薬の力があったとはいえ、凄く感じていたし後にも先にもあんな事は起こらないだろう。

まだ、俺の頭の中ではいろいろな事が整理できてなくて。
ただショックだったんだ。けど、それが知らない奴に掘られた事がショックなのか、酷く感じた自分の体がショックなのか分からない。


「最近やたら物憂げだねぇ〜似合わないよ、住田」

「……がっちゃん」

あんな事があって、学校に出てきてから1週間。
ショックな出来事だったけど、俺は傷ついてなんかない。だって男だ。まさかの事があったって妊娠する事なんてないし、傷だって癒える。幸い血を見たわけでもないし、そして…知らない男の後に鹿本を欲しがったのは俺自身なわけで。

「ってオイ!またぼんやりしてるっ。どっか悪いならもっかい病院行けよ。風邪で休んでからおかしくねぇか?ぼんやりの回数多すぎだよー」

ニカッ!と明るく笑うがっちゃんが、その裏に俺への心配を隠していることはなんとなく分かっていた。
けど、俺はそんながっちゃんに何一つ真実は言えない。


そして、今は何よりも気がかりがある。
アレからずっと、鹿本が学校を休んでいた。

俺とあの事があってから姿を現していないらしい。ニ、三日ならサボったのだろうと誰も気にしてなかった事なのに、四日目には鹿本のツレががっちゃんを尋ねに来たらしい。

鹿本しらねぇか、って。

そのツレが呼び出したかったのは俺だったらしいが風邪で休んでいたからがっちゃんに矛先が向いただけで…。
結局そのツレがこのクラスを尋ねにきたのも一回きり。

元からクラスメイトは鹿本を敬遠してるから、鹿本がしばらく姿を出さなくたって気にしない。むしろ変な噂を立てて面白がったりはしていたけど。
そんなクラスメイトが担任に鹿本はどうしたのか、とわざわざ尋ねるなんて事するわけもなく、結局このまま退学するんじゃないかとか、ヤバイ奴に捕まってるんだとか噂ばかりが出回っていた。

俺がわざわざ連絡取ってまで鹿本の現状を知るくらいなら、絶対ツレが先に連絡入れてる。
最近見かける鹿本のツレは以前と変わらない感じだし、あれ以来このクラスにまで鹿本はどうしたって訊きに来ない所をみると…多分、鹿本の現状をどうにか知り得たのだろう。

だから、心配なんてしないし、わざわざ鹿本の為に俺が行動しようなんて思わない。
きっとそんなことしたら鹿本に鼻で笑われて終わりそうだし。


その日、がっちゃんと別れ下駄箱に向かう俺は鹿本のツレの途切れ途切れの会話を耳にしてその場に固まった。

「―――――て、懲りてねぇよな〜竜也。だって退院してまだ一日だぜ?―――つって」
「――さんと―――、片手折られたくらいじゃ竜也は大人しくもなんねぇだろ。相手の―――が――。…で、いつから学校出てくるって?」
「―――とか、なんとか。まぁちょうど―――」

ガハハハ、と笑い声が響く。

竜也って…鹿本、竜也…。

入院って?片手折られた…って?


このところ考えてばかりだったせいか、その単語が鹿本のことなのだと、すんなり頭の中に吸収された。





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