鹿本くんと住田くん | ナノ
鹿本くんと住田くん
08
「あぁっ!まっ、て…くう、っ」
鹿本が俺の中で暴れている。
内臓をかき回されるような感覚。全てがバラバラに千切れてしまうような筋肉の震え。
そうだ、求めていたのは俺。
「だめ、っ…イク!またぁ!!」
ぎゅ、ぎゅ、っと腹筋が痙攣を起こした。
腰を高く引き上げられて、鹿本を受け入れながら、辺りを汚した。
「…あっ、あっ」
鹿本が息を詰めるのが分かった。
眉間に寄ったシワは快楽か、痛みか。
きっと俺は鹿本を痛いくらい締め付けているんじゃないだろうか。だって、さっきから止まらない。
「すげぇな。薬か?それとももう薬なんてとっくに抜けきってるか?」
「わからな…っう」
自分の呼吸する音がうるさかった。
足の先から弛緩していくのが分かる。鹿本が支えているだけで、俺はもうどこにも力を入れれそうになかった。
「もう終わりか」
駄目だ、感覚が少しずつ奪われていく。もう出せない。
小さく顎を動かしてもう無理だと伝えたけれど、それが伝わったかは分からない。
鹿本の指先が、汗ばんだ額に張り付いた髪の毛を剥がすように動いて、掌が瞼の上に乗った。
じんわりと伝わる熱が心地よくて、目を瞑った。
先ほどまでと違って、鹿本の動きが緩やかだった。そんなのでお前は達くのか?と思いながらも、鹿本に向けれる気遣いなんて少しも残ってなかった。
自分の意識が遠のいていく。
そこから俺が目覚めたのが翌日なのか数時間後なのか分からなかった。
けれど、気持ちが悪くて全く動けない状態だった。
薬が合わなかったのだと、鹿本は運が悪かったなって笑うだけだった。
そんな鹿本に腹立たしさも湧かないくらい、俺は疲労と吐き気と戦った。
起き上がれるようになって、鹿本のツレの車を使って自宅まで帰えしてもらったものの、動けるようになったのは3日後だった。
俺がこんな事になったって、俺の周りは何も変わらない。
母さんだって家事をこなして、風邪でもひいたんでしょうって風邪薬を渡してくれた。
そこに在るのは当たり前の日常で、俺だけが数日間異世界に飛ばされていたかのようだった。
END
10.10.04
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