鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
01






「ってか、アンタ竜也と女と話し合ったんだろ?俺の忠告聞いて、ちゃんと竜也はアンタの前に顔出したじゃん」
「顔出したからって無かった事にはならねぇし。話し合ったからって俺は手を出さないなんて一言も言ってない」
「ひでぇ男」
「同じセリフを佳代にも言われた」
「アンタ、あの女ボコったって?」

男は、フンと鼻で笑う。

「俺が居ながら鹿本になびいた罰だ」

二度目の「ひでぇ男」は声に出す事もしなかった。
なんで俺がこんな男の傍に居るんだっけ?まぁいいや。なるようにしかなんねぇよな。

「…ま、ハルちゃんは災難だったね。可哀想に。恨むなら竜也恨みなよ」

もしくはこのひでぇ男を。
出来れば俺の事は恨んでくれるな…って無理な話か。

力なく、くたばってるハルちゃんの顎を上げて、なんのラベルも貼られていない瓶から透明の液体をスポイドで吸い上げた。
吸い上げたそれはいつもより少なめ。この量、俺の優しさなんだけどな…ハルちゃんには絶対伝わんないよな〜。

自然に開かれたハルちゃんの口に、液体を流し込んだ。










お腹が痛い。

体が熱い。

幼い頃、風邪引いたらこんな感じで寝込んでたっけ?

うーん、なんか違う。


しかしこのお腹の痛みはなんだ・・・。
俺腹筋使うことなんてしたっけ。
今日は…今日は学校で…あれ、学校行った?行ったな。学校の門をくぐる手前でなんか声かけられて、そうそう、あの耳フェチ野郎に。そんで…、

ビクリ、と体を震わせて目を開いた。
目の前には古い天井。
ズキンと痛む腹に、耳フェチ野郎に膝を入れられたことを思い出した。

そして自分でもどうしようもないほど体温が高い事が分かる。風邪でも引いてしまったのだろうか、この一瞬で。こんな熱、初めてじゃないか?

「う…ん、」

息苦しくて口を空けてみる。喉も渇いているようだ。
此処はどこなんだろう。自宅ならば、這いずって水を取りに行くのに…。
けれど、この天井に見覚えがあった。

鹿本の家だ。


「…か、もと」

擦れた声で呟けば、傍で人が動く気配がした。

「お、目ぇ覚めたか」

って言葉とともに、自分が足蹴にされて床に転がっている事に気付いた。
何よりも蹴られただけで、体が異様に震えて、体の異変に動揺した。
知らない声と熱と体の異変。全く理解が出来ない。あの耳フェチはどこへ行ったんだ。鹿本はここに居ないのだろうか?

首を動かして、自分を蹴った人間を見上げた。
やっぱり、知らないヤツだった。

鹿本と同じくらいの体格で、髪の毛は肩に付くか付かないかの長さ。白に近い金髪が全く似合ってなかった。
首元と袖口に見えたタトゥはおそらく上半身の皮膚を広く覆っているのが安易に分かった。

「それなりに楽しませろよ?」

そう言って、俺の胸倉を掴み上げた。
殴られるのだと覚悟を決めたのに、そいつの手は俺の服を捲り上げた。

擦れる服の動きが、自分の肌に敏感に伝わる。
抵抗するのに、些細な事で体が震え、何故、と口にすることも出来ないまま、荒く熱い息を吐いた。

「ふん、和志のヤツ手加減したな」

和志って誰なんだ。

「――っ!」

自分の乳首に触れた男の指先に体に電流が走るような衝撃が貫けた。

「イ、ヤ…なに、!?」

頭の芯がジンジンするような。
触られて益々体温が上がっている気がする。何とか男の手から逃れたいのに、ざらついた手が肌を撫でていくだけでピリピリと体に刺激を与えてくる。

「熱、い…嫌だ。やめっ――」


「もうおっぱじめてやんの。ちょっとぐらい待てよ〜」

のんびりとした第三者の声に目を開く。
がさりと紙袋を傍に投げつけて、入ってきたのはあの耳フェチ野郎だった。






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