鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
01





グッチャグチャだった。

馬場さんの言葉をきっかけに、鹿本が何を考えてるのか、俺はどうなんだ、とか、行く先に何があるんだとか、今の関係をどうすればいいのかとか。

とにかく考えれば考えるほどきりが無くて、はまり込んでいく。
不覚にもそんな最中に鹿本を問い詰めようとして、なんとも無様な姿を見せた。

これを悩みって言うんだろう。今まで些細な事にぶつかっては来たものの、これほどまでに自分を占めたことなんて無かった。
そして俺の悩みって世間一般の男子高校生が抱えてる物とはかなり次元が違うって事も。
これから先の将来に、女に片思いしてとか、そんな悩みがフツーなんだよ。


先ほどからの英語の授業は何一つ耳に届かなかった。今日もまたひたすら鹿本と俺の在り方を考えて一日が終わってしまいそうだった。

ずっと外に向けていた視線を教室に戻し、時計を見てみれば、もうチャイムが鳴る目前だった。
ほとんどの時間を鹿本に費やしてしまったらしい。そんな自分にもガッカリで、小さく溜息を机の上に吐き出した。

「じゃぁ、今日はここまでで。そーれーで、住田は、今度もそんな授業態度だと放課後みっちり個人授業になるぞ」

英語教師の呼びかけに沈んでいた頭が飛び跳ねる。ばっちり目が合うと、どうやら今日やっていたであろう教科書のページを開いて俺に向け、ニヤリと笑った。

「す、いませ…」






「住田、英語ん時何があったんだよ」
「ん?」

帰り支度をしていると隣の席のヤツが声を掛けてきた。

「なんか注意されてたじゃねぇか」
「あぁーいや、ちょっとぼんやりしてただけ」
「そんだけで言われるか?相当なぼんやりだったんだな」
「かな、わかんない」
「お前…って事は次の小テストの事聞いてねえんじゃねぇの」
「え、マジ」
「マジ」
「範囲教えてっ…!」
「おぉ、メロンパンな〜」

コイツは最近学校の近くに車で売りに来るメロンパンに嵌っているのだった。
来週の販売の時に、と約束をして。帰宅したら範囲をメールにして送ってもらう事を約束した。

鹿本のことを考えてたせいでメロンパン一つが飛ぶんだと思うとなんとも居たたまれない。
ただでさえ悩み疲れた所にこんな仕打ち、一体俺が何をしたんだろう。


ブツブツと文句を唱えながら下駄箱に向かえば、再度英語教師に出会い、同じようなことを口にされた。

「なに苛々してんだ、住田」
「なんもないです」

「お前今日の態度はなんだ。珍しいから許したものの、本当なら呼び出しててもおかしくないんだからな」
「はぁ」
「何かあったのか。私生活か?勉強の事か?英語なら何でも聞けばいいし、他の教科でもちゃんと先生は指導してくれるからちゃんと訊いた方がいいぞ。私生活の悩みでも多少は聞いてやれるから言えばいいんだから」
「いえ、そんな特に…」
「今度のテストの事だって―――…」

下駄箱には下校する生徒が行き交い、その真ん中で止まる事のなさそうな先生の言葉を受け取るこれは公開説教ではないのか…と思いながらとりあえずやる気の無い返事を返していた。




気の済んだ教師が去る頃には、生徒の姿ははぽつりぽつりと見えるだけになり、呼び出しとなんら変わりのない時間を過ごして溜息が出た。バイトが無かっただけ良かった方だ。

門を出てしばらく行けば信号。
その信号が青になるのを眺めながら、何の気なしに自分がたどり着く頃には赤信号で立ち止まるのだろう、もしくは上手くタイミングが合うか・・・なんて考えていると視界の端に派手な人間が飛び込んできた。


見るからに自分とは世界が違って、いや、苦手なタイ――…

「おっ、ハルちゃんじゃね?」






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