鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
05






 日々を重ねるごとに重たくなる足だった。靴を履き替え、校門までの道のりを一人歩いていた。

 もしも今日も馬場さんが来ているなら、一人だったらいつものように声をかければ済む話だ。むしろ向こうから声がかかるだろう。
 万が一、鹿本と一緒なら…二人が気付かないうちに裏門へと逃げようか…。

 馬場さんに来るならメールして、と何度も言おうかと思ったが、そんな自分が女々しくて嫌だった。
 馬場さんが頭から鹿本目当てで来ているのなら俺のその行動は恥ずかしい事だし、だからといってメールが来た日に鹿本よりも先に学校を出るなんて行動をとるのはもっと嫌だった。

 何であれ、俺は何も行動に移す事が出来ない。

 二人がくっつく事が嫌なのか?間に居る自分の存在が嫌なのか?

 何が、嫌なのだ?

 門を出たところで、一人で居る馬場さんの姿が飛び込んできて、気分が楽になった。

「住田くん!」

「うっす、このところ良く来てるね」

「うん、楽しくって。あ、でも嫌?こういうの。鹿本くんも住田くんも、なんだか新鮮な友達だからついつい足を運んじゃうんだ」

 友達…、か。

「俺今日はバイトだよ」

「そうなんだ、私もシフト変ったから来週からなかなか来れなくなるかも…」

 そんな他愛のない話を続けながら、いつも彼女と別れる場所まで歩いていく。お互い時間が許すならファーストフード店で喋り続けたりもしていたが。

「ねぇ、鹿本くんって…住田くんから見てどんな感じ?」

 ドキリとした。
 その問いかけは、やっぱり馬場さんは鹿本に気があって…

「――どんな、感じ…って。うん、見たまんまだよ」

「優しい?」

「……まぁ、優しいところもある」

 優しい。鹿本は見た目とはちがって、優しい。酔っ払った俺をその場で捨てずに連れて帰ったり、介抱してくれたり。

「カッコイイよね」

「――まぁ」

 確かに整った顔をしている。いつだって女が居て、特に年上受けするらしい。普段は表情を変えることは少ないが、笑えば印象が変って…またそこが良いんだろう。

「鹿本くんのこと…好き、」

「えっ?」

 馬場さんの、小さな声はなぜかはっきりと耳に届く。やっぱり、馬場さんは鹿本の事が好きになったんだ。

「馬場さん…」

「ねぇ?…住田くん」

 馬場さんに頼まれたところで、俺はそんな仲を取り持つような器用な事出来る気がしない。
 何より彼女らしい彼女が居ない俺に、どうしろと?俺が居なくたって、馬場さんは鹿本とすでに仲が良いじゃないか…。

「俺、そういうの――」

「正直に言ってくれていいよ」

 仲は取り持てない、と正直に言ってしまっていいだろうか?彼女は傷つかないだろうか。やっぱりここはどうにかして、がっちゃんに説明してアドバイス貰って、馬場さんと鹿本をなんとかくっつけるべきだろうか…。

 でも、それで鹿本は?
 鹿本からすれば女の一人や二人付き合うのは平気だろう。馬場さんに対して少しでも好意があるのか?そこを俺が何とか聞き出せば、スムーズに事が運ぶかもしれない…。

「俺もできることは頑張ってみる…」

 だから、馬場さんも頑張…



「やっぱり!住田くんって鹿本君の事好きなんだ!うわぁ、初めて見るこれってあれだよね、同性愛、ボーイズラブ!」


 はぁぁぁぁぁぁ!?







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