鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
02






「住田、何泣いてんの?」

「う、ううん・・・」

「ってか、トイレ行ってなんで落ち込んで帰ってきてんだ?」


 がっちゃんに、どう説明したら良いのやら。ってか、チャック閉め忘れは確かに恥ずかしかったさ。中からパンツ見えてたわけだし。でも気にしない!

 そんなのとはまた違って、こう・・・

 って、そんな俺のモヤモヤを解明すべくがっちゃんに相談にのって欲しいのだが。そうなるともうあんなことやこんな事まで話しなくちゃいけないようで・・・

 それは勘弁・・・。

「はぁぁ・・・・」


 現社の先生が入ってくるのを見て、自分の席に着いてまたため息ついた。

 窓際の俺の席から一列後ろで、そしてずーっと反対側に当たる廊下側の席に鹿本の席がある。だから黒板見てるフリして鹿本を見るとかなんとか・・・そういうことはなかなかできないわけで。

 存在がでかいから・・・いや、クラスでも浮いてるって意味で、鹿本が居るか居ないかってのは分かる。

 現社の先生が委員長を連れていた。その委員長の手には大きな地図。それを教室にセットしている時に少し遅れて自分の席に戻ってきた鹿本。


 あぁ、なんだか鹿本が居る方に細い糸で引っ張られているような感覚で・・・・早い話が、気になるらしい、俺は。

 思い返すのも恥ずかしくなるような、あの日のこと。でも俺は確かに鹿本を感じてたし、覚えている。

 あの腕に、あの胸に、あの唇に―・・・



「だあぁぁっ!!!!!」


 だめだ、考えちゃ!



「・・・・住田、いい度胸だな。苦手な現社でその態度」

 先生の声にはたと我に返れば、頭を抱えて立ち上がってた俺に集まるクラスの視線。あまりの恥ずかしさに、今すぐ消えたかった。

 目の合ったがっちゃんからは心配する視線を頂いた。










「失礼しました・・・」

 音を立てて社会科室の扉を閉めた。授業での騒ぎの罰に地図を片付けるのに借り出された。まだぐちぐちと説教されなかっただけマシか。

「・・・はぁぁぁ」

 こう、ツイてない時ってのは続くもんなんだよな。きっとこのため息が運を逃がしているに違いない。

「―・・・と、こういう時はマンゴーオレだ」

 気分転換だと自販機に向かった。

 角を曲がった所に設置してある自販機に向かいながらちょっと警戒している自分も居た。

 責任転嫁。俺のため息の原因は鹿本だ、そしてそのため息によって俺の運はどんどん零れ落ちてっているんだ。

 よって警戒せよ、鹿本に!


 神経を張り巡らせてやっと自販機目前。その角を曲がればマンゴーオレが待っている。

「本日2本目〜♪ ・・・・だぁっ!!!」

 角を曲がった自販機の前には鹿本。

 どうやらとことんついてないらしい。いや、何かが起こると決まったわけじゃない、平常心でやり過ごすんだ、俺。

 鹿本も喉だって渇くじゃないか、自販機にだって来るだろう。気にするな、俺。そう唱えながら自販機の前に立つ。鹿本の視線を感じつつも、自販機にお金を入れた。

 そしてボタンを・・・・


「―・・・って売り切れっ!」

 俺のマンゴー・・・

 もう、厄日だ。そうとしか思えない。



「…やる」

 ポイと投げられた物が、見えた色から一瞬で愛しのマンゴーだと気付いた俺は慌ててそれを受け取った。落とすわけになんていかないじゃないか。

「今日は何かと縁があるらしいな」

 そ、それは気のせいだと思う!

「あ、うん、そう?アリガト、これ」

 愛しのマンゴーには罪はないしな。ありがたく頂くよ。ってか!鹿本がマンゴー買わなきゃ俺に回ってきたし!そんなにマンゴー好きじゃないだろ?どうなんだ!?

 そんな鹿本が代わりに購入したのはイチゴオレ。


 ―・・・がっちゃん、こいつにチビって言ってみろよ。






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