鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
03






「う・・・わっ」

 鹿本の舌に意識を持っていかれているうちに、鹿本の指先は俺の胸をもてあそび始めて、そんな慣れない感覚に戸惑う。


「もう下、触って欲しいんだろ?」


 ぐっ・・・!
 見透かすような視線と、鹿本に与えられる喜びを知っているこの身体・・・。

「離せよ・・・」

 そんな事言ったって無駄だって分かってるし、この後の展開なんて・・・ってちょっとドキドキしてるのも正直な所。


 だけど、鹿本の手はあっさりと俺を解放した


「え?」

 拘束の解けた俺の身体なのに、直ぐに動く事が出来なくて。かといって鹿本の顔を見ることも出来なくて。

「ま、嫌がるヤツを襲うほど俺も困っちゃいねーし・・・」

 クツクツと笑いながら、そんなセリフを吐いた鹿本は、身体を起こすとベッド横に置いてあった煙草を手に取った。ベッドを降りると、テーブル前に腰を下ろして頭をかきむしっていた。

 ジッポの音がして、煙草の煙が漂っても、まだ俺はその場から動けなかった。

 わかんねぇ。

 鹿本のことも、自分自身も。



 のそりと身体を起こして、布団を剥ぐと、乱れた服を軽く直した。

「俺、帰る。」

 泊めてもらってありがとうとか、迷惑かけて悪かったとか、色々、色々、思ってたのに言葉として出すことをためらった。
 まぁ、別に鹿本はそんなこと気にしてないだろうけど。

 
 しばらく、鹿本が何か喋るんじゃないかとか、なんか動くかと思ったけど、相変わらず煙草の煙を吐き出すだけで、その場から動かない。
 立ち上がり、その後ろ姿を見ながら部屋を出ようとした。


 帰るつもりで。


 なのに何、この腕。


「ちょ・・・鹿本」


 俺の腕を掴んでいる鹿本の手。引き剥がそうと、腕を振り上げると、それよりも強い力で握られた。


「鹿本、俺帰る・・・」



「んー、やっぱダメだわ。俺らしく攻めることにする」

「は、はぁ!?」
 
 俺らしくってなんだ。腹黒い笑みの後、煙草をもみ消すと、俺の腕を引いた。


「ちょ、ちょちょちょ・・・!」

 何でまた組み敷かれてるのーーー!

「なんか、変に色々考えたけど・・・今更だよな」

 今更とか何だ!今更とか。

 し、しかも、なんかすでにベルトに手がかけられてるんだけどっ!手ぇ早すぎだっ。

 慌てて空いた手で抵抗するも、全て鹿本に上手くあしらわれて、さっきまでのベッドの上でのまったりした感じなんてなかった。急速に追い上げられていく感じ、せわしなく剥ぎ取られていく感じ。

「い、やっ!」

「おう、抵抗しろよ。そっちの方が俺も燃える」

 えぇぇぇぇぇ!
 
「あうっ」

 ゾクゾクと快感が背中を駆け上がるのは、鹿本の舌が俺の乳首を転がすから。こんな、こんなことで声が出るとか恥ずかしい以外の何ものでもない。

 鹿本に抵抗するように何度も俺は男だ、と頭で唱える。こんなので・・・感じるわけ、感じるわけ・・・


 くそっ!






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