鹿本くんと住田くん | ナノ
鹿本くんと住田くん
01
「ぅん・・・・」
暑い。
暑さに目覚めたものの、ここはどこなのだろうか。目に入る天井は自分の部屋のものとは似ても似つかない純和風の茶色。
ダルイ頭を上げる事が出来なくて、少し回して見ると・・・・
「っ!・・・か、鹿本!?」
目の前に鹿本のドアップ。
一体どういうことなんだ。そして今何時なんだ。今日は何曜日なんだ。なんで俺はここに居るんだ!?
身じろぐと、暑さの原因と言うか・・・・鹿本の腕が布団ごと包むように俺に絡まっていた。一体どういうこと?
必死で腕を抜き出そうともがくも、中で布団が絡まり、爆睡中の鹿本の腕は重かった。何より自分の身体の重たいことといったら・・・そして原因不明の頭痛。
「おい・・・おい鹿本」
こうなったら鹿本を起こすしかない。ジワリと汗ばむ身体も不快だ。
力の入らない腕で、何とか鹿本が起きそうな、気付きそうな動きをもぞもぞと繰り返す。せめて寝返ってこの乗っている腕さえ外れれば・・・。
一向に動く気配のない鹿本とますます体温が上がり熱がこもっていく俺。頭痛は酷くなる一方だ。
「くっ、鹿本〜〜〜っ!起きてくれ」
「キスしてくれたら離してやる」
「何馬鹿な事言ってんだっ。取り敢えず起きろ!・・・・って、え?」
動きを止めて鹿本を見ると、目は瞑ったまま。がしかし肩が揺れて、そのうちクツクツと笑う声が聞こえてきた。
「・・・・・起きてんじゃねーかっ!」
そりゃ腕も動かないはずだ。
きっとこれは鹿本が俺に仕掛けたものだろう。
「ってか、ね、暑い。ほんと・・・頭も痛いし。退いてもらえますか・・・」
「断る」
「はぁ?なんで。もうのぼせそうに暑いんだけど・・・」
鹿本は未だ目を瞑ったまま。以前に気付いた少し長く感じる睫毛をマジマジと見入る。
「昨日・・・覚えてんのか?」
「昨日?あ、ってかなんで俺ここにいんの?」
ここは鹿本の家、そして以前押し倒されたベッドの上。
「覚えてねーのか」
「・・・・」
「合コ「あぁぁぁぁぁ!」
そうだ。
昨日は鹿本に誘われて合コンに行った。確かに行った。あの薄暗いBarも、煙草の煙で白く染まった空気も、甘い姉さん方の香水だって、確かに嗅いだ。
んで、確かキラキラしたお姉さんが話し掛けてきて・・・・それでお酒飲んで・・・・
・・・・それから?
「マジか・・・・」
記憶がそこで途切れていた。何とか搾り出してみたものの、思い出すのはお姉さんの服の隙間から見えた胸の谷間と、オレンジ色したカクテルに刺さっていたフルーツをお姉さんが俺に食べさせてくれた事くらい。
話の内容なんてこれっぽっちも思い出せない・・・・。
「俺、どうやって帰ってきたの」
「車」
「えっと・・・記憶がない」
「だろうな」
この頭痛も酒のせいなのか。
「なぁ、俺なんかしたかな、まずいことしでかしてなかった?」
「・・・・まずいこと?・・・・と言えばまずいことだな」
パチリと見開いた鹿本の目が、俺を射止めた。
「え!?マジ?・・・なんか店の物壊したりした?車で騒いだとか!?」
上半身を浮かせた鹿本が布団を捲り上げ、俺の腕を押さえ込んだ。そして覗かせた表情は黒い笑み。
そ、そんなに不機嫌になるようなことを・・・!?
まずい、まずいよ。物損にしろ、今の俺にはお金がない。鹿本の友人関係を壊すような事態になっているのなら、俺の命がない。
ものすごい力を込められ、近寄って来る鹿本に「ひっ」と擦れた声が出た。
殴られると思った俺を裏切るような声で、耳元に近づけられた口から発する言葉は優しく、そして艶っぽい声色だった。
「二日酔いでも・・・・スッキリしていることに気付かないか?住田」
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