鹿本くんと住田くん | ナノ



鹿本くんと住田くん
04






「住田。住田、起きろ」


ゆさゆさと揺さぶられてる感覚に意識がふわりと浮上した。


「あー・・・鹿本。」

「馬鹿か。どんだけ飲んだんだよ。」

「わっかんねー・・・・つーかぁ、鹿本が連れてきたのにぃーほったらかしとかありえねぇーくない?」

視線を上げるも、鹿本と目が合っているのかさえ分からない。
フワフワした視界と、煙草の臭いと、かすかに漂う鹿本の香水。

「合コンっつったろ、なんで傍に居なきゃなんねーんだ。ほら、水。」

「無理ー無理ー、俺無理ー・・・。・・・。」

「こら、寝んな。」

ぐいっと腕を引き上げられたけど、そのまま鹿本に任せた。
何もかもが億劫だ。
フワフワした感覚は気持がいいし、変に気分もいいんだけど・・・億劫だ。



何がどうなったのか、鹿本に連れ出された外の空気は新鮮で、もたれたブロック塀がひんやりしてて気持ちよかった。

「酒弱いのか。」

「んんーわかんねーって。あ、あれは飲めなかった、えーっとえーっと・・・」

「・・・。」

「きらきらのぉーお姉さまがぁ、オレンジの、なんか。持ってきてぇ・・・それが、うまくってぇ・・・それはいっぱい飲んだー・・・かも?」


「もういい、黙れ。」

「鹿本ってぇー冷たいよなぁー!あんなふうに笑うの〜俺知らなかったしぃ〜」



「来た。ほら行くぞ」

「あぁ?」

また鹿本に引き上げられ、それでもって引きずられるように階段を登った。
そこには黒い車。
乗って来たヤツだ。

「あれぇ、帰るのぉ」

「自分の状態分かってんのか、住田。」

「・・・わかってるよぉー鹿本にぃ〜遊ばれてんのぉ。」

「・・・・早く乗れよ」

ドンと後部座席に押し入れられて、反対側の扉に頭をぶつけた。

「ミツ、俺ん家送って。」

「ハイハイ、つーか、車で吐かせんなよ。」

ロン毛の運転手は“ミツ”と言うらしい。
また俺をニヤリと見つめる。

酔った思考回路では恐怖だとか緊張だとかは麻痺してたけど、車で吐いたりなんかしたら殺されんのかな?なんて思いながら目を閉じた。






「可愛がってんじゃんか。」

「どこが。」

「タツならこんなヤツ連れてこねーだろ?ましてやヤマトの代わりが必要なワケじゃないのもわかってたろ?」

「言っとけ・・・・」

「チャンスだなぁタッちゃんよー」

「何のだよ。」

車の窓を開けて、煙草の煙を外に吐くと、外の空気を吸い込んだ。





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