鹿本くんと住田くん | ナノ
鹿本くんと住田くん
02
つーか、天気予報・・・雨って言ってたっけ?
午後の授業を受け始めた頃からどんよりとした雲が広がり、しばらくするとぽつぽつと雨が降り出した。
アスファルトの匂いが立ちこめ、湿気で教科書がどうにかなりそうなそんな午後。
あー傘が無い。
とぼんやり考えて、携帯で天気予報なんかを調べてみる。
どうやらしばらくすれば止みそうな天気だったけど、今日の授業はこれで終わりだからしばらく止むのを待たなくちゃいけない事になる。
この雨の中・・・濡れて帰るのはちょっと、な。
一番近いコンビニといってもそこそこ距離があるし・・・・けっこう激しすぎるんじゃないかと、まさにバケツをひっくり返したというような雨。
あぁ・・・
あ、がっちゃん傘2本持ってないかな?
授業が終わってがっちゃんに声を掛けると「傘持ってねーから香奈に入れてもらう」と言う即答を受けた。
くそっ!
こんな時も彼女がいるやつってのは優遇されているものなのだろうか!?
湿気が漂う教室で、机までも湿気てきたとさえ感じる頃には教室に俺しか残っていなかった。
部活に行った者、初めは雨が止むのを待つ者も居たのに、結局予想よりも長引きそうな雨に痺れを切らし、鞄を残して体一つで雨に濡れて帰宅する者も居た。
幸いバイトもないし、帰ったところで何をするわけでもないから雨に濡れて不快な思いをするのならトコトン待ってやろうじゃないか、と近くの椅子を引き寄せて窓枠に肘をついて外に視線を送る。
いつの間にやら大きな水溜りが何個も出来上がったグランド、打ち付ける雨をひたすら眺めるだけだった。
「くぁ・・・・退屈」
大きなあくびをしながら、いっそのこと寝てしまおうかとさえ思った。
どこぞの階では部活が行われているのか声が聞こえて、それと雨音が重なれば最高の眠り歌のように感じる。
ガラリと扉の開く音に振り向くと、俺の半分ほど視界を覆っていた瞼が、それはもうシャッキーン!なんて音がしそうなくらい見開いた。
「・・・・・鹿本」
小さい俺の声は雨の音に消されただろうか。
雨プラス鹿本、なんて絶対いいこと起こらなさそう、なんて変な予感を感じながら、俺を一目して直ぐに自分の席へ向かい、鞄を弄っていた。
今日は鞄持ってんのかよ・・・
なんて横目で鹿本の動きをしばらく見ていたけど、向こうが俺に何の関心もなさそうなので、視線をまた外に向けた。
これでもかってくらい・・・
心臓バクバク鳴ってるけどね!
そこは平常心、平常心。
さっさと鹿本出て行かないかな?なんて思いながら、鹿本に傘持ってるか聞いてみようかと思ったけど、また前みたいなことになるわけにはいかない。
というか、鹿本から物を借りるとか、絶対しちゃいけない。
アイツに関わっちゃいけない。
携帯の着信音に驚いて慌ててズボンをまさぐった。
さっきマナー切ったとこだったんだ・・・。
開いてみれば合コンで知り合った例の女の子。
またたいした内容ではなかったけれど、こういう時の時間つぶしにはちょうど良い。
雨で帰れない旨をメールで伝えて、また携帯を閉じた。
「女、出来たのか。」
真後ろから聞こえた鹿本の声にビクリと肩が、いや全身が震えた。
「え?」
「こないだ合コン行くっつってただろ?ちゃんと捕まえたか?」
「え。あ、ま、まぁね。ははは」
ハハハ、じゃねえよ。俺。
まあね。じゃねえよ、まだ彼女にまで進展してないし。
でも、なんだろうか変な意地でか、鹿本には彼女が出来たと言っておいたほうが良いような気がした。
彼女が居ないから、童貞だから、って馬鹿にされてるんだとそう思ってるから。
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