鹿本くんと住田くん | ナノ
鹿本くんと住田くん
01
ザァザァと。
アスファルトに打ち付ける雨の激しさに絶句した。
「雨降るなんて聞いてない…」
バイトから帰宅途中、ポツリポツリと降り出した雨は少しずつ強くなり、慌てて雨宿りしたのは閉店後の小さな商店の店先。
かろうじて雨は避けれているが、これ以上激しく降るようだったり風が出て来ると間違いなく濡れるだろう。
降り出した雨に打たれてしっとりと濡れた服が気持ち悪い。
止むだろうか。
10分ほどしたころ、もう濡れて帰るしかないのか、近くにコンビニはあるのか、なんて考えていたら、カタリと音がしてそちらに目をやる。
そこには自分が雨宿りしている商店の隣の建物・・・・との間に細い階段が。
こんなところに階段あるんだ・・・なんて思っていたらどうやら物音はその階段の先から聞こえてきたもの。
物音につられるように視線を上げた。
「あ」
思わず声が出た。
視線の先に立っていたのは、同じクラスの鹿本(かもと)。
喋ったこともなければ、彼はクラスの仲間からも一目置かれる・・・いや、いい意味なんてなくって。
鹿本は一般的に「不良」に分類されるのだ。
仲のいい人間なんて限られてて、俺なんかは喋るどころか鹿本の中に俺がクラスメイトだっていう認識があるかどうかも怪しい。
とはいうものの、自分で思わず発してしまった声に後悔してももう遅い。
俺の声に気付いて、視線を向けたにも関わらず、なんのリアクションもないのだ。
き、気まずい・・・
そのまま鹿本は家に帰るだろうと、そう思っていたのに、その足は階段を下りると俺の隣に並んだ。
思わず顔を上げて鹿本に視線を送るも
無視・・・。
なんなんだ。
隣に立つんなら何かあっても良いじゃないか。
それとも本当に俺の事・・・知らないとか?
結構ショックかも、それ。
かといってこっちからかける言葉なんて思い浮かばない・・・。
「住田(すみだ)・・・・」
「え?・・・あ、あ。うん。」
何、俺。
ってか俺の名前知ってたんだ。
「か、鹿本・・・も雨宿り?」
「濡れてる」
「え?」
「住田、濡れてる。」
「あ、うん、帰宅の途中で降り出しちゃって・・・」
「・・・・」
鹿本は携帯を取り出すとカチカチとメールを打っているのか何かし始めた。
・・・かみ合って、ない、よな?
「鹿本、建物から出てきたんなら傘借りれたんじゃ・・・」
カチカチカチカチ・・・・
あぁ、無反応。
良いんだけど、ね。
そんな急に仲良く会話しましょうってなったからってできるものでもないし・・・。
雨が降り出してからずいぶんと時間が経つのに止む気配はなくって・・・
気まずい雰囲気だと思っているのは俺だけなのか、鹿本は依然携帯を触ってて。
だんだんと冷える体とこの気まずい空気に泣きたくなった。
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