僕をよろしく | ナノ



僕をよろしく
22






 相川は保健室に着いて、先生に状況説明をしている途中で目を覚ました。

「大丈夫か、壱智。俺の事分かるか?」

 しばらくぼんやりした表情をしていた相川も状況を理解したのか「皓」と瀬川を呼んで答えた。

「バスケの途中でボール追いかけて田嶋もろとも倒れたんだ。頭打ってんだろ」

「うん、痛い」

 僕の方に向ける視線は、痛いものではなく、むしろ恥じらいを含んでいた。それはそうだろう、僕をどうにかしようとして自分が運ばれることになったんだから。

 保健の先生はしばらく相川に問診をして、相川はこれから病院へ一応の検査しに向かう事になり、先生は車を取りに出て行った。

「壱智、着替え取ってきてやる」

 瀬川のその言葉に頷く相川を見て、僕も教室に戻ろうとした。

「田嶋、ちょっと、いい?・・・皓、ごめん二人にして欲しいんだ」

「?・・・ああ」
 
 怪訝そうに僕に視線を向けた瀬川に、僕も頷いて答えた。瀬川が保健室の扉を閉めると、二人の間に沈黙が漂う。





「田嶋、」

 沈黙に耐えられなくなったのか、相川が横たわったまま視線を送ってくる。

「笑わないの?田嶋にわざと手を出したのに、こんな様になって・・・」

「・・・・笑えないよ」

「痛くないの」

 相川がわき腹に視線を送ってきたけど、それには曖昧な表情だけで答えた。痛くない訳じゃないけど、痛いと言ったって何が変わるわけでもない。



「・・・・皓の事ね、取らないで」

「僕は何も、」

「皓が田嶋の事見てるんだ。くだらないって、思う?でも・・・・必死だよ、僕。田嶋には分からないでしょう?振り向いてくれない人に必死になる気持ち・・・」


 わからない


 分からないよ


 そんな恋心



「噂で聞いたよ。薮内先輩に思われてるのに、付き合わずにいるんだって。思われてるのに・・・そんな、もてあそぶようなことして、楽しい?・・・その上、皓まで」


 分からないけど、


 相川にも僕の気持ちは


 分からないだろ?



「相川。・・・・相川が倒れた時、瀬川すごい必死に駆け寄ってきてたんだよ」

 瀬川はきっと気付いてないだけ。相川が近すぎて、見えてないだけなんだ。

「田嶋?」

 息苦しかった。
 この場に居る事が。
 









「お待たせ、壱智」

「田嶋とすれ違った?」

「あぁ・・・直ぐそこで。話ってなんだったんだ?」

「田嶋、泣いてた?」

「ん?いやわかんなかった。泣かすようなこと言ったのか」


「・・・・わかんない」






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